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美の壺スペシャル 「日本のすし」

<番組紹介>
日本が世界に誇る食の芸術「すし」を大特集! 
 
 ▽140年伝わる老舗の技に密着!
  「江戸前ずし」の艶の秘密とは?!
  ▽京都の「さばずし」「箱ずし」には、極上の心づくしが!
 ▽金沢では、回転ずしが大盛況!
  地元の魚をこよなく愛するすし職人のこだわりとは!?
 ▽俳優・木村多江も「知られざるすし」を探して高知の山へ!
 ▽石橋蓮司×草刈正雄の、すし対決!
 
<初回放送日:令和4(2020)年8月21日(金)>
 
 
今や、世界中の人々から愛される「日本のすし」。
職人の精緻な技から生み出される寿司は食べる芸術です。
その魅力を「美の壺」が大特集!
「日本のすし」に秘められた美をたっぷり味わい尽くします。
 
 

美の壺1.仕込みが生み出す江戸の華

 

日本橋・江戸前寿司の老舗「吉野鮨本店」(吉野正敏さん)


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朝9時。
開店前の仕込みに追われるのは、
東京・日本橋にある老舗寿司店「吉野鮨本店」。
創業は明治12(1879)年。
5代目店主・吉野正敏(よしの まさとし)さんは今でも
140年間受け継がれてきた、江戸前寿司の伝統的な方法で仕込んでいます。
 
 

 
「江戸前寿司」に欠かせない穴子は、
寿司にするためには、泥臭さとぬめりを消さなければなりません。
捌いた穴子を重ねて、そっと鍋の中に入れます。
そして、醤油、砂糖、みりんなどを合わせて、
弱火でじっくり煮ていきます。
1時間後、臭みは取れて、ふっくらと煮上がりました。
仕上げに、煮汁を煮詰めた甘いタレを塗ったら、
ふんわりとろける江戸前の味になりました。
 

 
今から200年程前に誕生したと言われる「江戸前寿司」。
始めは、江戸近海で取れた魚を屋台で握った
手軽なファストフードでした。
 
冷蔵庫のない時代、魚を寿司ダネに使うには、
保存が利くように手を加える必要がありました。
そこで魚ごとに「仕込みの技」が編み出されます。
 

 
海老はゆでて下ごしらえしていきます。
熱を加えると曲がってしまうため、まず串を打ちます。
湯に入れると赤く色づき、模様もクッキリ。
氷水で一気に冷まします。
紅白のコントラストが鮮やかな、目にも美味しい一品になりました。
 

 
江戸前の代表格「マグロ」は、
湯引きをして表面に熱を通したら、
醤油とみりんを合わせたタレの中に入れて漬け込みます。
このまま漬け込むことから「ヅケ」と呼ばれました。
およそ3時間後、醤油ダレがしみ込んで、
鮮やかだった赤身が深いルビー色に。
仕上げに煮切り醤油を塗ると、マグロが艶やかな色気を醸し出します。
 

 
  • 住所:〒103-0027
       東京都中央区日本橋3丁目8-11 
  • 電話:03-3274-3001
 
 

「豊洲市場」


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東京都江東区にある豊洲市場では、
朝5時半の鐘の音が鳴ると、マグロの競りの開始です。
生のマグロから、冷凍ものまで1000本以上。
小売店への仲介をする仲卸業者が、質の高いマグロを競り合います。 
 
鮪(マグロ):マグロ内藤

 
毎朝豊洲市場へ足を運ぶ、吉野鮨本店の吉野正敏さん。
マグロは35年の付き合いのある
仲卸の「まぐろ内藤」さんから仕入れています。
 
仲卸は目利きのプロです。
この日競り落としたマグロの中から、
吉野さんが求める部分を切り出していきます。
マグロには、1番・2番などと呼ばれる部分がありますが、
「やっぱり吉野さん、しっかりした魚を好まれるんで。
 脂がしっかりあって、身に張りがある2番しか使わないんで。」
2番は「大トロ」「中トロ」「赤身」が取れて、
全ての部位がバランス良く使えるところです。
因みに1番は腹上の大トロの部分だそうです。
 
小鰭(コハダ):司水産(大山晃弘さん)

吉野さんが次に訪れたのは、
寿司や天ぷら用の魚介を扱う「司水産」(つかさすいさん)
旬を迎えた多彩な魚が全国から集まっています。
 
吉野さんは、江戸前寿司に欠かせない「コハダ」を選んでいます。
「コハダ」は一年を通して手に入りますが、
季節や産地によって、身の大きさや質はまちまち。
また、コハダは店のカラーが出る魚だそうで、
10軒あれば10軒、しめ方が違うし、好みも違う、
面白い魚だと 大山さんはおっしゃいます。
吉野さんは、天草産と佐賀産のコハダを比べて、天草産を買いました。
 
「コハダ」をいかに仕込むか」寿司職人の腕の見せどころです。
コハダは身が薄く、水っぽい上に、小骨も多いため、
「煮ても焼いても食えない」と言われてきました。
 

 
吉野さんの店では「江戸前寿司」の伝統的な方法で仕込んでいます。
まずは中骨と腹骨を丁寧に外します。
続いて身の部分。
一枚一枚に粗塩をまぶして、余分な水分を取ります。
季節毎に変わる身の大きさに合わせて、
塩の分量や寝かせる時間は調節します。
この日は2時間寝かせました。
じんわりと水分が抜けたコハダは、
身がしっかりと締まり、色にもメリハリが出ています。
 
酢で洗って生臭さを消し、残った鱗もキレイに落とした後、
酢に漬け込んで旨味を引き出します。
こうすると残った小骨も柔らかくなり、昔ながらの職人の知恵です。
仕込み始めておよそ5時間。
煮ても焼いても食えないコハダが
銀色に輝く「江戸前寿司」の顔に生まれ変わりました。
 

 
コハダに合わせるのは、江戸前の寿司飯です。
吉野鮨本店」では、
ほんのり赤くなる酒粕から作られた「粕酢」と塩で味付けされた
創業時から変わらない寿司飯を使っています。
 

 
いよいよお披露目です。
コハダに飾り包丁を入れたら、昔ながらの技で握っていきます。
伝統的な握り方の一つ「本手返し」。
寿司ダネと寿司飯を密着させながら、上下左右、全ての面を整えます。
 
 
 

美の壺2.ハレの気分にさそう

 

京都・鯖寿司を家族で楽しむ・西陣織工房「織文意匠 鈴木」

 


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京都市北区にある織物の工房「織文意匠 鈴木」。
家族3代に渡って守り続けています。
鈴木キクさんは15~16歳で機織り職人になり、
100歳を迎えた今も西陣織を支えています。
「若い間から、ハサミだけは使うてましたさかいね、おかげさんで。
 あんまり裏にごちゃごちゃしてるとね、写りますさかいね。
 出来るだけそれがないようにしてます。」
 

 
鈴木さん一家では、
おめでたいことがあるといつもお寿司を食べてきました。
鯖を酢で締めて押し寿司にした「鯖ずし」に、
いなり寿司、巻き寿司、箱寿司。
かつては、手の掛かる「鯖ずし」も家で作っていたそうです。
 

 
「お寿司は前の日の晩からこしらえます。
 鯖ずしは大変ですねん、骨、取らんなんしね。
 皆、親戚に配りますねん。
 兄弟さんや皆に配りまして、食べてもらいます。
 やっぱ、お祭り思い出すよね。
 鯖ずしっていったら、まあ お祭り。」
 
  • 住所:〒603-8217
       京都府京都市北区紫野上門前町13
  • 電話:075-491-4141
 
 

京都・鯖寿司の名店「いづ重」

 
京都では、一年を通して様々なお祭りが催されています。
そんな祭り日の御馳走に欠かせないのが「お寿司」です。
京都の人々は、豪勢に盛りつけたり、家々で作ったお寿司を
親族や近所に配ったり、寿司を囲んで、祭りを祝ったと言います。
 
京都市祇園の名店「 いづ重」(いづじゅう)は、
昔ながらの寿司を今に伝えるお店です。
老舗の有名鯖ずし屋「いづう」の大番頭を務めた
北村重吉(きたむら じゅうきち)さんが暖簾分けをし、
明治45年に創業してから100年以上、
変わらない 寿司作りの技を守ってきました。
 

 
 
鯖ずし
「鯖ずし」は店の看板メニュー。
祇園祭の時には、普段以上の数を仕込みます。
昆布を贅沢に使い、
鯖がたっぷり見える切り口は、
祭りの気分を盛り上げてくれる豪快さです。
 
おくどさん
すしの出来を左右するという「ごはん」。
京都では、今でも「おくどさん」と呼ばれてきた竈(かまど)で、
薪を使って米を炊きます。
 
昆布と鰹節で取った出汁を沸騰させたら、米を一気に流し入れます。
その名も「びっくり炊き」という炊き方をします。
一気に強火で、固めに炊きます。
釜の縁が滴ってきたら出来頃です。
米一粒一粒がしっかり立った、寿司に最適なごはんが炊けました。
 
 
味付けも昔ながらのやり方で、
白砂糖を溶かした糖蜜と米酢を創業時から変わらぬ割合で合わせます。
ごはんに馴染ませたら、
後は扇がずに、じっくり冷めるのを待って一粒一粒に味を含ませます。
つやつやの極上のごはんが出来上がりました。
 
いなりずし
創業時からの定番が「いなりずし」です。
甘く炊いた油揚げは、2時間かけてじっくり味を沁み込ませました。
ごはんには、麻の実にゆず、甘辛く煮た刻みごぼうを入れて
風味と食感を楽しめるように工夫しています。
甘めの汁とゆずの香りが口いっぱい広がる店自慢のいなりずしです。
 
箱寿司
型にごはんと具材を詰めて押し固める「箱寿司」は
ごはんを彩るとっておきの技です。
エビや卵の彩りを並べ替えて市松模様に美しく、
目にも楽しく食べてもらうための工夫が凝らされています。
 
美しい包み紙(掛け紙)
店主の北村典生さんは寿司をより楽しんでもらおうと、
寿司の包み紙を手作りしています。
テーマは四季折々の風物。
季節毎に包み紙を替えるという趣向です。
 
北村さんは、若い頃から寿司屋を継ぐことを決めていながらも
絵を描くのが好きで、嵯峨美術短期大学で日本画を学びました。
寿司の包み紙を自らデザインして版画を彫り、
奥様のゆみさんが一枚一枚木版画で摺っていきます。
 

 
  • 住所:〒605-0073
       京都府京都市東山区祇園町北側292 
  • 電話:075-561-0019
 
 
 

美の壺.「木村多江のおすしいただきます!in 高知」前半

 
「美の壺」のナレーションを担当している木村さんが
高知を訪れました。
とにかくお寿司が見たいと、まず直販所「とさのさと」に向かいました。
 
店内には、高知名産の文担などの柑橘や
近海で取れた新鮮な魚がズラリと並んでいます。
お総菜コーナーーには、ありました。
見たことのないお寿司がいろいろと並んでいます。
カブにタケノコのお寿司・・・。
鯖には頭が付いていますが、高知では当たり前なんだそうです。
 
  • 住所:〒781-0083
       高知県高知市北御座10−46 
  • 電話:088-878-8722
 
 

宿毛市・きびなごの寿司(きびなごのほおかぶり)

 
高知県は、南は太平洋、北は四国山地に囲まれ、
温暖な気候にも恵まれた自然豊かな地域です。
豊富に採れる「海の幸」や「山の幸」を使ったお寿司が
地域毎に伝わり、今も人々の暮らしの中に根づいています。
 
そんな「郷土の寿司」を求めて、
木村さんは高知県の西の端に位置する宿毛市に向かいました。
宿毛市は漁業が盛んな地域で、
目の前に広がる海では、豊富な種類の魚が獲れると言います。
 
港でイワシを干物にしていた漁師の川原さんに
「きびなご寿司」の存在を教えていただきました。
そして早速、河原さんの奥様・多絵さんに
寿司づくりの様子を見せていただくことになりました。
 
宿毛では一年を通して獲れるですが、
多絵さんは、体長は10㎝程の「キビナゴ」に真っ直ぐハサミ入れて、
すばやく捌いていきます。
捌いた「キビナゴ」を酢で締めたら、
高知名産の生姜に「キビナゴ」を漬けると、
身の銀色がキラキラと輝いています。
 
お次は、中華鍋の中に「おから」を入れ、
砂糖、生姜、鯖のほぐし身などを加えて、
しっとりするまで炒めていきます。
 
「おから」がまとまってきたら一口サイズに丸め、
それをきびなごで包んだら、
「きびなごのほおかぶり」の完成です。
この辺りでは、昔から米の代わりに
「おから」を使うというお寿司文化があったそうです。
元々はイワシで包んでいましたが、
多絵さんは20年程前に、
御主人の義郎さんが水揚げする「キビナゴ」を使うことを思い立ち、
手まりのように見た目が可愛らしくて、
女性がパクッて口に入れるのにちょうどいい大きさの
「きびなごのほおかぶり」を考案しました。
 
お寿司が出来たら、大皿一杯に料理を盛りつける
高知ならではの「皿鉢」(さわち)という器をいくつも並べて
みんなで囲み、宴会です。
宴会は「おきゃく」と言って、
お寿司は欠かしてはならないものだそうです。
 
 
 

美の壺3.ふるさとをにぎる

 

金沢・人気の回転ずし「金沢まいもん寿司」
(田中靖久さん)

北陸の玄関口 石川県金沢市は、加賀百万石の城下町として栄えた街です。
そこかしこに歴史情緒が残ります。
数ある観光スポットの中で、今、人気を集めているのが「回転ずし」です。
 
金沢に3店舗、関東や名古屋にも出店する人気の回転ずしのお店です。
人々のお目当ては、日本海の新鮮な海の幸です。
金沢港で揚がる甘海老は「赤い宝石」とも呼ばれ、
プリップリの身を楽しむことが出来ます。
能登沖で取れた「カワハギ」にはとろける肝を添えて。
日本海の荒波にもまれた鰯は、
その赤さが身の締まりの良さを物語っています。
金沢近海のバラエティー豊かな魚が目にも楽しく回っています。
 
店長の田中靖久さんによると、
現在のネタは多い時で140〜150種類くらいもあるのだとか。
最近の人気は北陸名産の高級魚「ノドグロ」で、ここ数年で人気になりました。
20年前は、まだ地元でもあまり知られていない食材だったそうです。
「ノドグロ」は脂が多いため、もっぱら焼くのが一般的です。
それを「金沢まいもん寿司」では、
バーナーで炙って焦げ目を付けることで
皮目は香ばしく、身は脂の旨味を引き立てて、
「ノドグロ」ならではの味と食感を堪能出来る新しい寿司を生み出しました。
 
  • 住所:〒920-0027
        石川県金沢市駅西新町3-20-7 
  • 電話:076-234-1144
 
 

主計町の寿司店「鮨処あさの川」
(店主・乙部友寿さん)

 
金沢市の中心部にある近江町市場は、
170以上の店が軒を連ね、市民の台所として愛されてきました。
店先には、金沢近海で獲れた新鮮な魚がずらりと並んでいます。
 
  • 住所:〒920-0905
       石川県金沢市上近江町50
 
 
この日近江町市場に仕入れに来ていたのは、
主計町(かずえまち)にある「鮨処あさの川」の店主・
乙部友寿(おとべ ともかず)さんです。
 
鮨処あさの川」は、回転寿し「金沢まいもん寿司」の系列店で、
伝説の鮨職人「小松弥助」の森田一夫さんの監修で
平成28(2016)年にオープンしました。
乙部さんも以前は「金沢まいもん寿司本店」で店長を務められていたそうです。
 
  • 住所:〒920-0908
        石川県金沢市主計町2−13 
  • 電話:076-222-1114
 
 
鮨処あさの川」の店主・乙部友寿さんは、
数ある魚を自ら確かめて選び、その日のメニューを決めます。
 
乙部さんは地元の魚は必ずチェック。
この日、目をつけたのは輪島沖で取れた「アラ」です。
スズキの仲間で独特の深い旨味が特徴です。 
それと、金沢では「アカイカ」と呼ばれている「ケンサキイカ」。
身のやわらかさと濃厚な甘みが味わえます。
 
乙部さんは地物の個性をより際立たせるために
魚毎に工夫を凝らしています。
脂が乗った「アラ」は、その味を存分に味わってもらうために
厚めに切りつけます。
新鮮なためまだ身が硬いので、包丁を入れて食べやすくします。
握りにも一工夫し、
「アラ」の味を舌でより感じられるように、
寿司飯をふんわりと包み込むようにまとめます。
そして、金沢の粉醤油でアクセントをつけました。
 
「イカ」はその甘さをどう引き出すかが勝負です。
最も甘いのは身の中なので、
3枚にそいで、甘みの部分を味わえるようにします。

そこに、能登の塩を一振りすると、

北陸の素材を生かしきった一品になります。

 

器も北陸らしさを演出しています。

「イカ」の握りは青い九谷焼に載せて、日本海のような景色になっています。

緑と黄色の器には「タイ」を合わせます。

一見 派手な印象の器も、金沢の寿司にはピッタリなんだとか。

 

「金沢の漁港って、白身がすごいたくさん多いんですけど、
 その白身の中であって、映える出し方でもあったりとか、
 やっぱり色使いであったりとかっていうのは、
 九谷には僕は映えるなとは思います。」
 
鮨処あさの川」には、
金沢芸妓がお座敷の前後によく立ち寄るそうです。
今回の訪ねていたのは、きみ代さん、桃太郎さん、うた子さん。
いずれもお茶屋の仲乃家の芸妓さんです。
 
「時間やお腹のすき具合に合わせて、
 好きな量を好きな時に食べられるのが
 近所のおすし屋さんのいいところですよね。
 食べたい時にだけ食べたい。
 かっこつける必要がないと思います。
 それが金沢のおすしじゃないかな。」
 
地元のものを気取らず、飾らず。
金沢の風土に育まれた寿司の楽しみ方です。
 
 
 

美の壺4.巻いて切って七変化

 

美しい飾り巻きずしの店「金太楼鮨本店」
(高橋和夫さん)

 
もう一つ、寿司で欠かせないものと言えば、
海苔で巻かれた「巻き寿司」です。
マグロが入った、ご存じ「鉄火巻き」は、一説には、
その昔「鉄火場」と呼ばれていた賭博場で食べられていたことが
名前の由来なんだとか。
「カッパ巻き」は、キュウリが好物のカッパから
その名が付いたと言われています。
「かんぴょう巻き」は、夕顔の実を削って乾燥させた
干瓢を甘く煮て巻いた定番の巻き寿司です。
 
ところで「かんぴょう巻き」のまたの名をご存じですか?
「鉄砲巻き」って言ったんです、昔は。
細長い姿が鉄砲の砲身に似ていることが由来とされます。
中の芯が干瓢が出るぐらいに巻いていきます。
 
 
巻き寿司を紹介してくれたのは、
「金太楼鮨」の専務・高橋和夫さんです。
「金太楼鮨」は大正13(1924)年創業の老舗の江戸前鮨で、
現在は、浅草を中心に関東で16店舗を展開しています。
 
大正時代から続くこの店には
昔から伝わる特別な巻きずし「細工巻き」(さいくまき)があります。
職人がお得意さんに喜んでもらうため、
その家の家紋を巻いたのが始まりと言われています。
以降創意工夫を凝らし、様々なデザインが生まれました。
キレイな出来栄えにするために、自分で計算して研究を重ねています。
職人さんたちも日頃から空いた時間に練習しているそうです。
 
  • 住所:〒111-0025
       東京都台東区東浅草1-21-7 
  • 電話:03-3873-3075
 
 
「巻き寿司」を語るのに欠かせないものと言えば「海苔」ですね。
日本では古くから、貴重な海産物として食べられてきました。
江戸時代になると海苔の養殖が始まり、
やがて平らで薄い「板のり」が誕生します。
そして、しなやかな紙のように姿を変えた「海苔」は、
寿司を巻く材料として使われるようになりました。
 
手軽に作れる「巻き寿司」は一般家庭にも広く普及。
行楽弁当の定番にもなり、
また家族でワクワクしながら巻く「手巻き寿司」も楽しみの一つになりました。
 
「岡山市にあるおすし屋さん。海苔100枚にお米一斗。
 このお化けずし、さて、誰が食べるのか?おすし屋さんは得意です。」
 ♬ 日本ニュース 終
 

ロールずし(裏巻き鮨)の店「Sushi Avenue K's」
             (スシ・アベニュー・ケイズ)

 
「巻き寿司」に魅了されたのは日本人だけではありません。
1960年代以降、アメリカで日本食が注目を集めるようになっていく中で、
人々を虜にしたのが、「カリフォルニアロール」でした。
当時、アメリカでは生魚を食べる習慣があまりなかったため、
具にはアボカドとゆでたカニ。
肝心の海苔も苦手な人が多かったため、ひっくり返しちゃいました。
裏巻きにするという逆転の発想で、外国人にも愛される寿司が生まれたのです。
 
海外で姿を変えた「巻き寿司」は、今、更なる進化を続けています。
伊勢丹新宿本店の食料品売り場を覗いてみると、
何ともカラフルな巻き寿司が並んでいます。
具を中に巻くだけでなく、表面にも飾ったものもあります。
このカラフルな「ロールずし」(裏巻き鮨)をメインに売り出しているのは、
「Sushi Avenue K’s(スシ・アベニュー・ケイズ)」という
お持ち帰り鮨店「京樽」の新事業店舗です。
 
「ロールずし」を開発したのは、矢矧吉男(やはぎ よしお)さんです。
ごはんを白いキャンバスに見立てて発想を巡らせ、
これまで考案したのは、何と200種類以上。
「何を組み合わせても商品になるところが、
 やっぱ、ロールの特殊なところで。
 例えば果物との組み合わせですとか、洋野菜との組み合わせ、
 後は食用花(エディブルフラワー)を使った組み合わせですとか。
 いろいろなものを組み合わせて、キレイに飾れば飾るほど、
 お客さんの目を引いてですね、
 「あら❤」なんて、感動をちょっと与えられるような商品が作れるところに
 魅力は感じますね。」
 
現在、矢矧さんは西洋野菜のビーツを使った新作に取り組んでいます。
ビーツと言えば、甘味と独特のコクがあり、
サラダやスープなどに使うことが多い野菜ですが、
実は、この甘味は酸味との相性が良いため酢飯にピッタリ!
ビーツをすりおろして酢飯に混ぜたごはんを使ってます。
 
具にはレモンのジュレをかけた生野菜をたっぷり入れて、
サラダ感覚で楽しめるようにしました。
脂の乗ったサーモンを合わせてら、すだちを添えて爽やかに仕上げました。
さっぱりと食べられる、新感覚の「巻きずし」が完成しました。
 
「やっぱり、絶対に合わないものもあるんですね。
 食べてみて「うわ、こりゃダメだ」っていうのも結構多いんですけども。
 いろいろやってみると解決するところもあります。
 何でもやってみないと分からないところ ありますんで 、
 まあ作ってて、一番楽しいですよね。」
 
  • 住所:〒160-0022
       東京都新宿区新宿3-14-1
  • 電 話:03-3350-6734
 
 
 

美の壺.「木村多江のおすしいただきます!in 高知」後半

 

野菜の寿司「田舎寿司」

 
今度は高知県中西部にある山間の町・津野町にやってきた木村多江さん。
畑で葉っぱを採っていた笹岡三栄(ささおか さえ)さんに声をかけました。
 
笹岡さんはお寿司づくりの名人。
早速、畑で採っていた「大菜」(おおな)を使ったお寿司を作るところを
見せていただきました。
 
まずは、寿司飯を作ります。
ご飯に、笹岡さんが自宅で搾った自家製の「ゆず酢」に
高知の「生姜」をみじん切りにしたものと「胡麻」を入れて、
混ぜます。
 
寿司飯が出来たら、畑で獲れた大菜を丸ごと塩茹します。
津野町では、昔から寿司を作るのに
海苔の代わりに、大菜は欠かせない食材でした。
柔らかくてキレイな鮮やかなグリーンになったら、
ゆずのきいたごはんをたっぷり載せて、
具には、人参、椎茸、ずいき、蕗、自家製のたくあんを載せたら、
ギュッと巻きすを巻けば、色合いがキレイで、爽やかな香りの
巻き寿司が完成しました。
「歯応えもまたいいですね。大菜の苦味もちょっと利いています。」
 
大菜は冬の間しか採れないため、
山の幸で作るお寿司を一年中楽しめるようにと、
笹岡さんは仲間と一緒に工夫を重ね、
「りゅうきゅう」と呼ばれる高知の夏野菜を塩漬けにしたものを冷凍し、
いつでも食べられるようにしました。
使う時は、塩を抜いてゆず酢に漬けます。
 
夏から秋にかけて旬を迎える「みょうが」も甘酢に漬けて、
色良く保存しておきます。
限られた時期にしか採れない食材を上手に保存して使う、
暮らしの知恵が生きているんです。
 
食材の形に合わせて、お寿司の形はそれぞれ個性的です。
椎茸は丸いので、丸くして上に載せます。
みょうが甘酢漬け、たけのこのお寿司もあります。
りゅうきゅうは巻きすで巻いて、押し寿司にしました。
こんにゃくも稲荷寿司の要領で、中にご飯押し込んで作ります。
 
 
笹岡さんのお父さん三一さんは村の料理名人で、
海の幸が手に入らなくても、身近な食材で寿司を作っては、
みんなを喜ばせていたと言います。
山間にあるこの地域でも、ハレの日の御馳走と言えば「お寿司」でした。
 
「お魚が手に入らなくても、違うもので楽しむ。
 海苔が入らなければ、青菜とかそういうもので楽しむとか
 そういう生活の知恵であり、食文化を楽しむということが
 何か、とても素敵だなってふうに思いました。
 ハレの日のみんなが集まって、みんなで ワイワイ食べる楽しさと、
 なかなか食べられないお寿司を食べられる嬉しさと、

 皆さんの そういうものをね、感じることが出来て、

 私もお寿司を誰かと作ったり、誰かに作ってあげたくなりましたね。」

 

高知の人達の思いがたっぷり詰まったお寿司でした。
 
 

美の壺5.うつわの中に思いを込めて

 

祖母から受け継ぐ大きな木製の器
(料理研究家・真藤舞衣子さん)

料理研究家の真藤舞衣子(しんどう まいこ)さんは、
家族定番の「ちらしずし」を作っていらっしゃいます。
使っていた「おばあちゃま」と呼ぶ大きな器は、
お祖母様が二十歳ぐらいの時に作らせたという
丸太をくりぬいて作ったというもの。
器で酢飯を作り、そのまま具材を散らした家族定番のちらしずしに、
母の真栄さんと共にご満悦です。
 
 

ちらし寿司の店「つるや鮨」
(磯貝政博さん)

東京世田谷区で3代続く江戸前ずしの店「つるや鮨」は、
昼時になると、地元の常連客で賑わいます。
お目当ては具沢山の「ちらしずし」です。
 
3代目店主・磯貝政博(いそがい まさひろ)さんは、
14年前に脳出血で倒れて以来、
左手が麻痺して動かすことが出来なくなってしまったのですが
奥様のアドバイスで「ちらし寿司」を手掛けることにしました。
 
出来るだけ早く握れるように、
ストップウォッチ片手に練習を積んだそうです。
派手なところはないけど、具がみっちり詰まった美味しそうなお寿司です。
 
つるや鮨
  • 住所:〒154-0003
       東京都世田谷区野沢2-34-1
  • 電話:03-3421-2003
 

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