マグロにこだわるすし職人が追い求める
美味しさと美しさを兼ね備えた握り
▽江戸創業、老舗の舞台裏に密着!
職人の腕が試される
こはだの子「新子(しんこ)」の仕込みとは
▽5時間かけて作る極上の玉子焼き
▽江戸前ずしの名脇役、「おぼろ」とは?
▽伝統の握り方「本手返し」の技
▽すし種に極限まで包丁を入れたイカの輝きと
究極の口溶け!
▽濃厚な味わいの熟成ずし。
熟成期間はなんと一ヶ月!?くえ握りの色気
<初回放送日: 令和4(2022)年10月7日(金)>
美の壺1.ビジュアル:一瞬の美を求めて
まぐろ~赤身・中トロ・大トロ(銀座はっこく・佐藤博之さん)
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世界一の寿司激戦区である銀座に、
マグロを極め、独自の赤酢のシャリで瞬く間に話題店があります。
店主の佐藤博之さんは25歳で鮨職人としての修業を始め、
銀座「鮨とかみ」の料理長を任されると、
わずか半年でグルメガイドの一つ星を獲得したことで、
一躍話題となった寿司職人です。
昨今の赤酢のシャリのブームを勢いづけた存在でもあります。
その佐藤さんが、平成30(2018)年2月に名店がひしめく銀座六丁目の一角に、
店名の「はっこく」とは「白黒」を意味するそうです。
近年定番化しつつある、つまみと握りを織り交ぜた料理コースではなく、
本来の江戸前鮨屋のスタイルを貫き、敢えて「握り」のみ。
マグロの希少部位「突先」(とっさき)を、
有明産の最高級の海苔で巻いた「手巻き鮨」から始まり、
表面をキャラメリゼのように焦がした「玉」で締めくくられます。
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ネタは、最高峰と名高い豊洲の卸問屋
選りすぐりの魚介に美しく飾り包丁をして、
みずみずしさを失わないよう調理し、
しっかりと赤酢の効いた酢飯とともにご提供しています。
久し振りに良いマグロに出会えたと、佐藤さん。
1000本1万本に1本位の奇跡の1本。見た瞬間に分かるそうです。
とろけるような味の軟らかさ。
きめ細かく入った脂の美しい桜色。
佐藤さんが思い描く理想のマグロです。
佐藤さんが目指すのは、美味しさが伝わる美しい握りです。
まずは、「赤身」を甘味を加えた醤油に5分ほど漬けて、
「ヅケ」にします。
醤油によって深い赤が引き出された「漬けマグロ」が、
赤酢の酢飯と相俟ってシックな佇まいをしています。
「中トロ」は、赤身からトロへの色の濃淡に注目します。
グラデーションの入り具合にもいろいろあるので、
それを1番キレイに見せる握りを考えます。
赤身から霜降りへの艶やかな変化に思わず見惚れてしまいました。
「大トロ」は、酢飯に沿って細い脂の筋を乗せて、
優美なラインを強調しました。
口にすれば消える刹那の色と形に情熱を注ぎます。
「食べるのは一瞬。
それでもパッと置かれた時に、
お客様が「わーきれい美味しそう」と言って下さるのが嬉しい。
儚いけれど、そこがお寿司の良いところなのかな。」
「はっこく」が監修したマグロ丼のお店です。
マグロは全て天然本鮪で、シャリは赤酢シャリです。
- 住所:〒104-0061
東京都中央区銀座6-7-6
ラペビル3F
- 電話:050-5487-2241
- 渋谷店
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-6-4
The Neat青山1階
- 大阪店(北新地)
〒530-0002 大阪市北区曾根崎新地1-1-37
トップス新地ビル 1F
江戸前寿司の「シンコ」(浅草:弁天山 美家古寿司・内田正さん)
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本物の寿司を楽しみたい方に人気のある本格的な寿司店です。
創業は慶応2(1866)年。
現在「江戸前ずし」と言われる寿司の始祖である、
江戸時代の寿司職人・華屋与兵衛の流れを汲む、
東京きっての老舗です。
華屋 與兵衛(はなや よへえ)
江戸時代・文政(1818~1830年)初期、「与兵衛寿司」を開業し、そこで押し寿司とは違う「江戸前の握り寿司」を考え出したことから、一般的には、「握り寿司」の考案者とされています。
与兵衛は、江戸前で獲れた穴子・鯖・小鰭・車海老といった魚を下ごしらえした上で酢飯に乗せ、掌で握り締めて客に出しました。醤油などをつける必要はなく、わさびを挟むやり方も与兵衛の考案になると言われています。これはマグロなどの鮮魚を乗せる際に、毒消しの意味があったようです。
与兵衛は、他の業者と競い豪華な寿司を提供したことから、
奢侈を禁じた「天保の改革」の際には、他の寿司職人ともども投獄されています。明治時代に出版された書物によると、
与兵衛が投獄された原因は「穴子寿司」にあったようです。
初代・伊藤久助が
「与兵衛寿司」の流れを汲むとされる千住「みやこ」(閉店)で修業し、
慶応2(1866)年に創業したとされるのが浅草「弁天山みやこ寿司」です。
三代目・竹三郎の時代に創業50年を迎えたことから、
自作の俳句
「美(み)どり濃き 家(や)なぎ寿く 古(こ)としかな」を
手拭いに染め上げ、お客様へ感謝の意を込めて配りました。
当時流行った言葉遊びで5・7・5の頭の文字を
「み」「や」「こ」として、ひらがなの元字を当てはめました。
※「や」の元字は「也」ですが 洒落て「家」となりました。
現在は、中学生の頃から修業を始め、
この店一筋60余年の五代目・内田正(うちだただし)さんが
六代目を継ぐ山下大輔(やましただいすけ)さんとともに、
煮きり、ツメ、ヅケ、酢〆、昆布〆など、
江戸前寿司の古典的技法を今なお守り続けています。
並ぶのは、煮たり締めたりして手間を掛けた「寿司種」(すしだね)です。
「仕事」を施すのが江戸前の伝統です。
「鮃」(ひらめ)は一晩昆布で挟んで寝かせると、旨味と香りを纏うため、
仕事をした「鮃」(ひらめ)はしっとり上品な装いになります。
「海老」は、開いたら甘酢漬けにするのが昔ながらの仕込み法です。
茹でることで、「海老」の鮮やかな赤が現れます。
味も美しさにも磨きをかけるのが、江戸前の心意気なのです。
江戸前寿司の代表的な光り物と言えば「小鰭」(こはだ)です。
それぞれのお店が「小鰭」(こはだ)にどの程度実力を注ぐかが
寿司屋の良し悪しを判断する基準となっている、
と内田さんはおっしゃいます。
「小鰭」(こはだ)はニシン目ニシン科コノシロに属する魚。
「シンコ」 (4〜5cm) ➡「コハダ」(7〜10cm)➡
「ナカズミ」(13cm程度)➡「コノシロ」(15cm以上)と
サイズによって名前の変わる「出世魚」としても
知られています。
また、「ツナシ」(関西地方)、「ハビロ」(佐賀県)、
「ドロクイ」「ジャコ」(高知県)などと、地域によって
若魚の名前が異なるのも特徴です。
「小鰭」は、柔らかく光沢感がある魚です。
肌が子供のようなので、「子肌」が語源だと言われています。
漢字の「鰭」は、魚のヒレを示す「ハタ(鰭)」に由来する当て字です。
6代目を継ぐ山下大輔(やましただいすけ)さんは15歳からこの道一筋。
「小鰭」の仕込みを任されています。
山下さんに小鰭の稚魚「新子」(しんこ)を仕込む様子を
見せていただきました。
「新子」(しんこ)は生まれて4カ月位のもので、
サイズはたったの4~6cm程ですが、春から夏にかけての、
3週間しか食べることが出来ないことから、
1kg当たり数万円の高値がつくこともあります。
それでも、江戸前寿司店で出される初物の新子のにぎり寿司を楽しみにしている方が多くいます。
小鰭と同じく酢じめで調理されることが多く、柔らかな食感と「新子」(しんこ)独特の爽やかな香りが絶品です!
山下さんは、まず塩を当て、余分な水分と臭みを取り除きます。
身の小さな「新子」は塩の浸透も早いため、様子をじっと見守ります。
次に酢で締めていきますが、
酢に漬ける時間が1分〜2分違うと味が変わってしまうため、
酢の入り具合を見極める間も職人は、片時も傍を離れられません。
身に酢が入ると生々しさが消え、ほんのり白く変化します。
更に一晩寝かせると、酸味の角が取れて、新子の繊細な旨味が引き出されます。
小さな「新子」は1貫に2尾使う贅沢な2枚づけにして使います。
仕上げに煮切り醤油を塗ると、スッキリとした鯔背な(いなせな)姿に!
職人の仕事で、新子が一層光り輝きました。
「お客さんの美味しそうな顔見ているだけで、
仕事をしていて良かったと思う」と内田さんはおっしゃいます。
一瞬のきらめきの陰に魂を込めた仕事あり。
江戸前ずしの真骨頂です。
- 住所:〒111-0032
東京都台東区浅草2丁目1−16
- 電話:03-3844-0034
≪参考≫ シンコ(新子)の捌き方と仕込み方(
銀座渡利さん)
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美の壺2.通好み:粋を支える名脇役
玉子焼き(東銀座:木挽町 とも樹・小林智樹さん・寿里さん)
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勝どきにあった「鮨 さゝ木」(閉店)などで修業をした
小林智樹(こばやし ともき)さんが
平成19(2007)年3月にをオープンしたお寿司屋さんです。
令和元(2019)年からは、
世界的グルメガイドブック「
ミシュラン」で二つ星を獲得しています。
guide.michelin.com
小林さんが特にこだわっているのが「玉子焼き」です。
職人の個性が1番出やすいし、出しやすいネタだとおっしゃいます。
材料がシンプルなだけに、
こだわるほど奥が深いという「玉子焼き」。
小林さんは修行時代からずっと練習をし、
自分の店を出してからもこだわり続け、
5時間かけて極上の「玉子焼き」作っています。
小林さんの作る「玉子焼き」は、
酢飯を煮込んで握る珍しいスタイルです。
握りも、ふんわりした厚みを生かした独創的な造形をしています。
「玉子焼き」の仕込みは、
奥様の小林寿里(こばやし じゅり)さんの担当です。
寿里さんも10代から和食の名店で修行してきました。
寿里さんはまず、おろした大和芋に芝海老のすり身、
更にハモのすり身を加えます。
玉子はきめ細かい生地にするために1つずつ加えて、
全部で12個の玉子を、その都度空気を含ませながら、
丁寧に混ぜ合わせていきます。
樹里さんは、全身を使って根気よく練り合わせ、
生地作りだけで1時間も掛かりますが、
この重労働も「大変だと思わない」とおっしゃいます。
考えるのは「美味しく出来たらいいな」ということだけ。
そうして、やっと「焼く」工程に入ります。
銅板の玉子焼き器で焼きます。
弱火かつ遠火で焼ける特注の台に置き、
厚みのある生地の中心までじっくりと火を入れます。
10分毎に向きを変えて、微妙な焼きムラをなくして均一に仕上げます。
この手間が、美味しい「玉子焼き」を生む秘訣なのだそうです。
1時間半後、やっと「玉子焼き」が焼けましたが、
厚みを出すために更にもう1枚重ねるのですが、
その2枚目を焼いていきます。
2枚目が7割方焼けたら、1枚目に焼いた「玉子焼き」を
微妙な厚みの差をなくすように細心の注意を払いながら
重ねて合わせます。
これこそふんわりとした食感を生む小林さんの秘策です。
およそ5時間後、完成。
しっかりとしたきつね色と淡い黄色のコントラストが鮮やかな
焼き上がりなっています。
しっとりきめ細やかな気泡は、職人の手間の賜物です。
「玉子焼きのふわっとしたデザート的な甘味と食感は
玉子でしか表現出来ません。
店を支えてくれる縁の下の力持ちです。」
- 住所:〒104-0061
東京都中央区銀座4丁目12−2
- 電話:03-5550-3401
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江戸前寿司の名店として名高い銀座「なか田」で20年間修業を積み、
京都・木屋町に「なか田」で初めて暖簾分けを許され、
食に厳しい京都で、江戸前寿司生え抜きの職人として名を馳せた
青木義(よし)さんが昭和61(1986)年に東京に店を移し
屋号を「青木」と改めて始めたお寿司屋さんです。
「
銀座 鮨青木」の二代目・青木利勝
(あおきとしかつ)さんは、
幼い頃から父が働く店の調理場を遊び場とし、
休日には父のもとで働く職人さんに混じって仕込みを手伝うのが
楽しくて仕方なかったそうです。
青木さんは大学を卒業後、1年間アメリカに留学したのですが、
そこで、グローバル社会の中で多様な変貌を遂げる「sushi」に
大きな可能性を感じたとおっしゃいます。
帰国後は、銀座の寿司御三家「与志乃」(閉店→
中野坂上店)にて修業を積み、
また先代のお父様の下で「なか田」仕込みの技を学び、
二代目になりました。
青木さんは、先代や歴史ある名店より受け継いだ
江戸前寿司の伝統を礎としながらも、
1年間アメリカに留学で感じた思い胸に、
「どうしたらお客様に美味しいと笑顔になっていただけるか」と、
青木さんが作る見事なデザインの「ちらし寿司」。
実は、ここにも江戸前寿司の名脇役がいます。
エビの下に潜んでいる「おぼろ」です。
「おぼろ」はエビのすり身を使った江戸前寿司の伝統的な仕事で、
ちらし寿司や太巻だけでなく、
「握り」にもネタとシャリの間に挟んで使われていて、
しっとりした食感が特徴です。
寿司に鮮やかな色で華やぎを添え、
上品なほんのりとした甘味を与えてくれます。
「おぼろなくては江戸前寿司はない」
「おぼろは握りを美味しくさせる調味料」と青木さんはおっしゃいます。
青木さんが「おぼろ」に使うのは、
新鮮な「芝海老」(しばえび)と「車海老」(くるまえび)の2種類のエビです。
「芝海老」はふわっとした食感があり、「車海老」は甘味があるため、
2種類入れることで色も味も良くなるそうです。
サッと湯通ししたエビをミンチにしたら、
舌触りを滑らかにするために丁寧に擦ります。
しっとりし、粒が細かいのが青木さんの「おぼろ」です。
鍋に入れた酒とみりんのアルコールを飛ばして甘みをつけた調味料に
エビのミンチを入れたらひたすら炒って、水分を飛ばして完成です。
手間が掛かるため、おぼろを作る職人も減りつつあるそうですが、
青木さんは、名人と謳われたお父様から引き継いだ味を守っています。
「材料は良いものを使え!というのが父の遺言。」
父直伝の「おぼろ」を忍ばせるのは、
「かすご」(春小・春子)と呼ばれる、鯛の稚魚つまり、小鯛(こだい)です。
「おぼろ」の甘みと旨みが、淡白な「かすご」の味を華やかにしてくれます。
それに、才巻海老(さいまきえび)の「唐子づけ」(からこづけ)です。
「唐子づけ」は「才巻海老」とたっぷりの「おぼろ」を握ったお寿司で、
その姿が唐代の「唐人笠」に似ていることからこの名がつきました。
青木さんは、ほんのり甘い自家製おぼろをかませて握ります。
主役脇役の区別なく、仕込みに全力を注ぐ青木さん。
「しっかりゼロから仕込んでいますし、食べても美味しい、
そういうネタこそ晴れの舞台に立つのが、
これからの江戸前寿司になると思います」と
おっしゃっていました。
- 住所:〒104-0061
東京都中央区銀座 6-7-7
第3岩月ビル4階
- 電話:03-3289-1044
美の壺3.革新:職人が切り拓(ひら)く新世界
握りと仕事の技(鮨 なかむら・中村将宣さん)
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平成12(2000)年の開業以来、
名店ひしめく六本木エリアで多くの食通達を虜にしている
「鮨 なかむら」。
京都の和食店をイメージした店内は、檜を使用したカウンター11席のみ。
大将の中村将宜(なかむら まさのり)さんは、
自ら築地で目利きした魚介類を仕入れ、
「マグロ」は、名立たる寿司店が御用達とする
「まぐろ藤田 ㈱フジタ水産」から仕入れています。
「酢飯」は、新潟県栃尾のコシヒカリを岩手の南部鉄の釜で炊いて、
赤酢と米酢を3種類程ブレンドしたすし酢を使って作ります。
中村さんのこだわりはそれだけではありません。
独学で様々な調理法や隠し包丁の研究を行い、
日々新しい江戸前のスタイルを追究しているのです。
ベースにあるのは、「本手返し」(ほんてがえし)という古典的な握り方です。
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寿司には大きく分けて、「本手返し」「小手返し」
「立て返し」の3つの握り方がありますが、
その中でも「本手返し」は最も伝統的な手法です。
まず手酢で手を軽く湿らせたら、右手でシャリを取り、
手の中を転がして形を整えます。
次に、右手人差し指でワサビを取ってネタに付けます。
ネタにシャリを乗せたら、右手を添えて形を整え、
左手親指でシャリにくぼみを入れます。
右手二本指で、ネタとシャリを合わせたら、
左手の四本指で底をつくり、親指で脇を押さえ、
同時に右手二本指で上から軽く押さえます。
右手を添えて寿司を回転させ、形を整えます。
「本手返し」は工程が多く難しいため、握れる職人はごく僅かだそうです。
「握り方で美味しく出来る」という中村さんの握りは、
空気を孕み、ふわりと握られているのが分かります。
そして、これが口どけの良さを生むのです。
中村さんはこの「本手返し」による握りに、
独自の仕事、繊細を極めた「包丁技」(ほうちょうわざ)を加えていきます。
「イカ」には、究極の口どけを求めて限界まで包丁を入れます。
「大トロ」は炙って、トロけるような食感に仕立てます。
目指すのは、「酢飯」と「寿司種」の極上の出会い。
伝統と進化が生む口どけにより、マグロの旨味と酢飯が響き合います。
「本手返し」は守っていきたい技術だとおっしゃる中村さんは、
シャリとネタが一体になった美味しさを日夜追求しています。
鮨 なかむら
- 住所:〒106-0032
東京都港区六本木7丁目17-16
- 電話:03-3746-0856
熟成寿司(西荻窪:鮨 まるふく・伊佐山豊さん)
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東京・西荻窪駅から歩いて3分くらい行ったところにある
「鮨 まるふく」の伊佐山豊(いさまやゆたか)さんは、
10年程前から江戸前寿司の新しい調理法として、
寿司種を「熟成」する方法を模索してきました。
伊佐山さんが理想としているのは、ただ美味しいだけではなく、
美味しさの先に職人の仕事が見えるオンリーワンの寿司です。
「元々、江戸時代の寿司は少し時間が経った、
“なれた”状態の魚をいかに美味しく食べるか、
という文化だったんです。
それに近いものを、現代風に表現したものがうちの寿司です」と
おっしゃいます。
魚を熟成させて作った「熟成寿司」が
今までに無い究極の一品として注目されています。
熟成させると、香りと色みと艶だけでなく、
魚本来の旨みやもっちりとした食感も引き出され、
なおかつ特有の臭みも抑えることが出来ます。
また食べ終わった後も、魚の余韻が長く続くそうです。
熟成する方法・期間は魚によって異なります。
伊佐山さんは素材の味を最大限引き出すために、
数時間から数十日間と手間暇掛けて、
温度管理や気圧管理などを行って熟成させます。
熟練の寿司職人でなければ、到底出せる代物ではありません。
因みにネタの熟成期間は以下の通りです。
- まぐろの漬け:18日
- めいち鯛 :14日
- こはだ :10日
- 剣先いか : 7日
- いわし :17日
- シマ海老 : 6日
番組では、高級魚「クエ」の仕込みの様子を見せていただきました。
「クエ」は身が硬いため、30日と長期熟成しなければなりません。
長期熟成した「クエ」は柔らかくなって、
酢飯によく馴染むようになるそうです。
まず、長崎県五島列島で獲れた「クエ」を洗います。
それを扇風機で表面の水分を飛ばしたら、熟成の準備に入ります。
3時間程乾燥させた後、吸水性のあるペーパー包んだら、
酸化を防ぐために二重に袋に入れて、空気に触れないように密閉します。
これを冷蔵庫で30日寝かせます。
寝かせている間は何度も水分を取り除いて、乾燥を繰り返しながら
「熟成」を促していきます。
1か月後、熟成された「クエ」は、いい塩梅で脱水しています。
身を押すと、指の跡が少し残るほどに身質も軟らかくなり、
また、いい香りが出ています。
この熟成「クエ」をサク(冊)にして、塩水で締めて2日程寝かせれば、
完成です。
30日経たとは思えないほどみずみずしい身は
水分をほどよく残し、ねっとりした食感に仕上がっています。
旨味と香りが存分に引き出された「クエ」と酢飯が
見事に融合しました。
「自分では進化系だと思っていますが、
魚に手間を掛けるところは昔の人と変わらない」と
伊佐山さんはおっしゃいます。
今も変わらぬ職人の心意気。
江戸前の伝統が未来へと受け継がれて行きます。
鮨 まるふく
- 住所:〒167-0053
東京都杉並区西荻南3-17-4
第五PRビル1F
- 電話:03-3334-6029