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美の壺「心潤す 湧き水」<File 421>

<番組紹介>
湧出量一日100万トン以上!
“東洋一”と言われる「柿田川湧水群」。
水底は絶滅危惧種の水草ミシマバイカモが咲き誇る
幻想的な光景!
 
 ▽圧巻!岩手県岩泉町の洞窟奥、
  湧き水でできた巨大地底湖。不思議な伝説が!
 ▽湧き水でいれたコーヒーや、
  湧き水で養殖した極上川魚など、
  湧き水が生み出す“味”に注目!
 ▽冷たい湧き水を
  台所や冷蔵庫がわりに使いながら暮らす、
  琵琶湖ほとりの集落にも密着!
 
<初回放送日:平成29(2017)年8月25日>
 
 
 

美の壺1.大自然がもたらしためぐみ

 

柿田川湧水群


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富士山の麓にある静岡県清水町には、
世界でも珍しい湧き水があります。
1200mに渡って無数に水が湧き出している
柿田川湧水群」です。
 
富士山の雨水や雪解け水は、10年以上の歳月をかけて
地下の溶岩流を潜り抜け、湧き出していると言います。
湧き出す水の量は1日100万t以上。
天然のフィルターを何層も潜り抜けてきた湧き水は
どこまでも透明で澄み渡っています。
 


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川底に咲くのは、
絶滅危惧種に指定されている「ミシマバイカモ」です。
世界でもこの場所でしか見ることが出来ない貴重な水草です。
 

 
三島梅花藻の里みしまばいかものさと
 
湧水の減少と水質悪化により、静岡県三島市内の
川から姿を消した水中花・ミシマバイカモを復元・育成するために、平成7(1995)年に佐野美術館
所有の湧水地に誕生した、環境施設。
5月より9月頃まで、可憐な小さな花を見ることが
出来ます。
  • 住所:〒411-0841
       静岡県三島市南本町7
 
同じく絶滅危惧種の「アオハダトンボ」。
そして綺麗な水辺を好んで生息する「カワセミ」。
湧き水が生み出した、
自然な生き物達の楽園を作り上げています。
 
 
 
柿田川湧水群」は、
地元の人々の手によって大切に守られてきました。
この日は外来植物を取り除いていました。
柿田川が私のこの地元の人は心のふるさと。
 水を飲むと綺麗だよ」
 

 
  • 住所:〒411-0907
       静岡県駿東郡清水町伏見71の7
 
 

岩手県岩泉町・龍泉洞の湧き水


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岩手県岩泉町、ここにも驚きの湧き水があります。
総延長3600mにも及ぶ「龍泉洞りゅうせんどう」です。
山口県の「秋芳洞あきよしどう」、高知県の「龍河洞りゅうがどう」と共に
「日本三大鍾乳洞」の一つに数えられ、
国の天然記念物に指定されています。
 
龍泉洞は、洞窟の奥から水がコンコンと沸いています。
昔から、地元の人々から名水が湧き出ることから、
「ワックツ(湧口)」と呼ばれ親しまれていました。
昭和12(1937)年、当時の文部省から調査のため派遣された脇水氏により、
水神の「龍」、泉の湧く洞穴の「泉洞」から
龍泉洞」と名付けられました。
 
 

 
龍泉洞から湧き出す水は毎分90t以上。
洞内には大量の湧き水が作り出した地底湖が8つもあります。
そのうち3つは一般に公開されています。
観光コースの最終地点である「第三地底湖」は、
98mと最も水深が深く、世界屈指の透明度を誇ります。
 
なぜ龍泉洞では豊富に水が湧き出るのでしょうか。
それは、この辺りの地質に秘密がありました。
 
「この辺りは、昔は海の底だと言われていました。
 そこに石灰岩になるサンゴ。
 有孔虫(ゆうこうちゅう)が堆積して地層を作っております。」
 

 
有孔虫は、世界の海に生息している、
大きさが数十ミクロンから数㎜程度と、
とても小さな原生動物です。
貝やサンゴと同じ炭酸カルシウムで出来ている
有孔虫の殻は、海底に沈み、
堆積物の中に化石として保存されます。
 
石灰岩で形成された石灰岩層からなる石灰洞は、
水に溶けやすく、長い年月の間に地下水の通り道が出来ていたのです。
 
龍泉洞の上流にある水源には、
14km北に広がる広大なブナの森が広がっています。
ここに降り注いだ雨水や雪解け水が、
腐葉土や粘土層を通るうちにろ過され、
更に石灰岩層によって長い年月をかけてろ過されます。
ろ過された水は地下深く浸透し、
湧水となって龍泉洞の地底湖に湧き出ます。
 
こうして湧き出た龍泉洞の水は、
暮らしを支える生命の泉として昔から大切にされてきました。
龍泉洞の湧き水は今でも人々の生活に欠かせません。
街の中心部に暮らす、およそ1600世帯で水道水として使われています。
 
 

 
龍泉洞の近くに建てられた小さな祠には、
ある言い伝えが残されています。
「江戸末期に先祖の目が見えなくなった。
 洞窟の水で目を洗えば見えるようになったんだけど、
 その時に白い蛇が中に入っていった。
 それお祀りしたのが始まりです。」
龍泉洞の湧き水は、人々の営みを変わらず支え続けます。
 
龍泉洞
  • 住所:〒027-0501
       岩手県下閉伊郡
       岩泉町岩泉神成1番地1
  • 電話:0194-22-2566
 
 
 

美の壺2.名水湧くところに麗しき味わい

 

富山県黒部市・箱根清水

 
富山県の立山連峰に積雪した雪は、
夏でも解けることのない万年雪となります。
その万年雪から解けた水は、天然フィルターとなる扇状地を通り、
黒部の平野地帯へ安定した水量で流れていきます。
その水の水温は1年を通して15度前後であり、
古くから観光客や旅人などの渇いた喉を潤してきました。
 

 
黒部市内には約750ヶ所以上の湧水井戸があります。
名水の里として知られる富山県黒部市荻生にも
地元で古くから親しまれてきた湧き水があります。
「箱根清水」(はこねしょうず)と呼ばれる湧き水です。
 

 
大きな壺から勢いよく流れるこの水は軟水で、
余分な成分の少ない口当たりの良い水です。
そのため近所の方は勿論、
遠くからも多くの方がこの水を求めて汲みにやって来ます。
 

 
現在、湧き水を中心的に管理しているのは、
近所に住む結城茂博(ゆうき しげひろ)さんです。
「箱根清水」は代々、結城家が受け継いできた水でした。
 
江戸時代、北陸街道が出来ると、そこを行き来する旅人達は
村の入口にあった「七本松」の下で疲れを癒したと言います。
そしてこの松の近くから湧水が発見されると、
近くに住んでいた結城さんの先祖が、
この湧水の側に小屋を構え、茶店を開いて旅する人をもてなし、
人々に喜ばれたと伝えられています。
結城家では、先祖代々、この湧水を守ってきました。
結城さんも両親が行っていた掃除を引き継ぎました。
 
その後、結城さんは湧き水を地元に寄贈しましたが、
自主的に週1回~2回の頻度で
水飲み場や周辺環境の清掃を一人で続けてきました。
現在は、近所に住む黒部名水会の会員の方々と協力して
週1回、欠かさずに行っています。
 
 
「箱根清水」は県外からも人が訪れる人気の場所になりました。
毎日、「箱根清水」はの水を組みにやってくる人がいます。
地元に住む北山晃さんです。
北山さんは近くの自家焙煎コーヒー店「水の時計」のオーナーで、
湧き水で入れたコーヒーが店の人気メニューになっています。
 

 
「コーヒーに香るように、
 水にもやっぱり色々な種類があるんですよね」
 

 
北山さんは焙煎する前の豆を水に浸します。
焙煎したコーヒーは湧き水を使って水出しをします。
3秒に2滴、12時間かけて抽出するこだわりのコーヒーです。
 
箱根清水
  • 住所:〒938-0000
       富山県黒部市荻生3106-2
  • 電話:0765-54-2111
 

 
 

岩手県八幡平市・ 金沢清水湧水群


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「金沢清水湧水群」(かなざわしみずゆうすいぐん)とは、
岩手県八幡平市松尾金沢地区に点在する7つの清水の総称で、
中でも最大の水量(毎分約20t)を誇る「座頭清水」の水は、
ニジマス、イワナ、ヒメマスの養殖と研究のために使用しています。
 
ニジマスやイワナは澄んだ水でしか育たず、
養殖が難しい魚です。
この湧き水を生簀(いけす)に引き込んで
山の清流と同じ環境を作り上げ、
長年かけてその技術を軌道に乗せました。
新鮮な湧き水の中で暮らす魚達は病気に罹りにくく、
デリケートな稚魚も丈夫に育ちます。
ニジマスも大きいものは、何と重さ4kgもあります。
 
 


 
「金沢清水湧水群」に湧き出す水は、
岩手山に降った水がおよそ20年かけて湧き出ています。
1日の湧水量は多くて3.4万tにもなります。
 

 
養殖場の裏には、岩手山からもたらされる
豊富で清浄な湧き水が湧き出ている水源が
ブナ、ミズナラなどの涵養林に囲まれてあります。
 

 
伝説によると、岩手山の滝には、
7つの頭を持った蛇龍が住んでいました。
地中に潜っていたこの蛇龍が、山里に頭を出した際に、
地面に空いた穴から水が湧いてきと伝えられています。
また「座頭清水」は、座頭にされた鬼がこの湧水で洗い清めて、
目が見えるようになったという伝説が由来とされています。
 
金沢清水湧水群
  • 住所:〒028-7302
       岩手県八幡平市金沢松尾寄木1
 
 
 

美の壺3.湧き水でつながる人の営み

 

滋賀県高島市針江地区の湧水

 
琵琶湖の北端に位置する高島市は、
陸地の72%が森林で、森に降るたくさんの雨や雪は土壌に浸透し、
時間をかけてろ過され、川となって琵琶湖に注ぎます。
琵琶湖の水の3分の1を生み出す水源の郷です。
 

 
山里にはいくつもの湧水があり、日常的に使われています。
高島市針江地区(はりえ)は、
およそ170世帯が暮らす琵琶湖のほとりの小さな集落です。
この地区では至る所で、
安曇川の伏流水と比良山系(ひらさんけい)から流れ着く
地下水を起源とする湧水が自噴しています。
その数は 110か所に上ります。
 
 
人々は、このキレイな湧き水を「生水」(しょうず)と言います。
「生水」は年間通して12~14℃とほぼ一定の水温を保っています。
水道水と違い、夏は冷たく、冬は温かく感じます。
 
集落の中を巡る水路やその水を生活用水に利用したシステムは
「川端」(かばた)と呼ばれ、
現在も、野菜を冷やしたり、炊事をしたり、
それぞれに工夫して使い続けています。
 
 


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針江集落の170戸の内、90軒程が「川端」(かばた)を残しています。
「川端」(かばた)には、
母屋の中にある「内川端」(うちかばた)と、
別棟の小屋になっている「外川端」(そとかばた)があります。
 
水路の脇に建つ小さな小屋の中に、この家の川端がありました。
針江生水の郷委員会会長の三宅進さんのお宅には、
「外川端」(そとかばた)があります。
三宅さんは40年前、川端のある暮らしに憧れてこの地区にやって来ました。
 
三宅さんの家の「川端」は3つの池に分かれています。
湧き水と繋がった「元池」(もといけ)から
湧き出した「生水」(しょうず)は、
「壺池」(つぼいけ)に溜められ、
料理、野菜洗い、洗顔に使われた後、
「端池」(はたいけ)に流れ込みます。
そこではたくさんの鯉を飼い、
鯉が料理の残飯などを食べて水が浄化された後、
その水は家の前の小川に入り、
やがて琵琶湖に流れて行くという仕組みになっています。
 


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代々、針江地区で暮らしてきた福田千代子さんの家にも
古くから受け継がれてきた「川端」があります。
福田さんの家では上水道が通った後でも、
ずっと「川端」を使い続けてきました。
 

 
この日は、長男・慎一郎さんの友人達が集まって
バーベキューパーティーが開かれました。
宴の後の洗い物は川端の「端池」(はたいけ)で。
その時、活躍してくれるのが端池で飼っている魚たち。
人や生き物が優しく繋がり合う湧き水の里です。
 

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