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イッピン「暮らしを彩るモダン柄~大阪・堺の手ぬぐい~」

<番組紹介>
普通、裏地は白いままだが、
裏も表と同じ柄が染め抜かれた手ぬぐい。
さらに表裏同じ柄なのに色が異なるもの。
ともに大人気だ。
この手ぬぐいを生んだ大阪・堺を訪ねる。
 
普通、手ぬぐいは裏地が白いままだが、
表裏同じ柄がくっきりと染め抜かれた手ぬぐいがある。
また、同じ柄なのに表と裏で色が異なるものも登場。
額装してインテリアに、
またスカーフにして色の違いを楽しむなど、
これまでにない使い道で、
女性を中心に人気を集めている。
開発したのは、日本有数の手ぬぐいの生産地、大阪・堺。
そこには、ベテランの職人たちの磨きこんだ技が
注ぎ込まれていた。
モデルの生方ななえさんが訪ねる。
 
 
 
大阪・堺市は江戸時代から木綿の栽培が盛んで、
水量が豊富な川で生地を洗うことが出来たため、
手拭い作りが始まったとされています。
 

1.にじゆら(「ナカニ」二代目・中尾雄ニさん)


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近年、若者を中心に人気を集めるエリアの大阪・中崎町。
ここに、注染手拭い専門店「にじゆら」があります。
店内には、カラフルで遊び心溢れるポップなデザインの手拭いが
およそ200種類以上並び、見る者を楽しませています。
 


 
この手拭いブランド 「にじゆら」を平成20(2008)年に立ち上げたのは、
古くから染色が地場産業だった大阪堺で
「注染」という技法を50年以上今も守り続けている「ナカニ」です。
「にじゆら」は現在、東京(染めこうば店、日本橋店)、
大阪(中崎町本店、ルクア大阪店)、京都三条店、神戸店の計6店舗あります。
 

 
 
にじゆら」の手拭いは、
全て「注染」(ちゅうせん)と呼ばれる技法で染められています。
「注染」(ちゅうせん)とは、
特殊な糊で防染し重ね上げた生地の上から染料注ぎ、
模様部分を染め上げる伝統的な型染めの一種です。
明治初期に大阪で生まれ全国に広がり、
「大阪」「浜松(静岡)」「東京」が三大都市として発展しました。
元々、一枚ずつしか染められなかった染め方に対し、
一気に何十枚も柄を染めるために生み出された染め方で、
一度の染めで、30枚~50枚程の重ねた手拭いを染めること
が出来ます。
とは言え、「注染」はいわゆる機械染めではないので、
その工程の全てが手仕事です。
熟練の技術を必要とする「注染」は
職人さんが減少し、注染工場は日本全国で二十数軒。
注染発祥の地でもある大阪も
かつては染め工場が軒を連ねていたそうですが、
現在は片手で数えられる程度になってしまいました。
 
 
まず、純白の1疋=25m程の晒木綿(さらしもめん)を糊付台の上に敷き、
型を生地の上にのせ、
その上からヘラと呼ばれる道具を使って
「防染糊」(ぼうせんのり)という染料を通さない特殊な糊を
均一に伸ばし付けていきます。
防染糊を塗った部分は染色されません。
 
それが終わったら木枠を上げて、残りの生地を同じ長さだけ折り返し、
また木型と枠を下ろして、均一に伸ばし付けていきます。
生地はロール状で、糊を置く毎にジャバラに折り重ねていきます。
 

 
糊置きされた生地を染め台の上に置き、
色をつけたい場所毎に、色同士が混ざり合わないように
防染糊を絞り出して「土手」(どて)と呼ばれる囲いを作ります。
そして土手の中に「ドヒン」と呼ばれるじょうろで染料を注ぎ、
染料が下の生地まで行き届くように
足元のペダルを踏んで真空ポンプで染め台の下から吸い取りながら
生地を染めていきます。
吸引しながら注ぐため、生地の目(隙間)を潰さずに
生地の柔らかな肌触りを保ちつつ染め上がります。
裏面にもこの作業を繰り返し、表裏のない「注染染め」が出来上がります。
この後、防染糊をしっかりと洗い流し、脱水し、乾燥させ、
シワ取りをして、裁断すれば完成です。
 
 

 
ところで、「にじゆら」の手拭いはそのブランド名が指し示すように、
染めの「にじみ」と「ゆらぎ」が特徴です。
実はこの「にじみ」は「染色業界では駄目な言葉」でした。
「注染」では、糊で「土手」を作って色が混ざらないようにする訳ですが、
にじんでしまった製品ははじかれる対象だったそうです。
中尾雄二さんは20年程前に、京都の手ぬぐい屋さんから
「べた染め」という染めていない生地の白い部分を作らずに
全面を色で染める注文を受けました。
ただ、注染で「べた染め」を行うと、
色が混ざり合うことは避けられません。
中尾さんは渋る職人さん達を説得し、にじみのある手拭いを作り、
納品しました。
 
ところが実際にお店で反応を聞いてみると
「すごく売れている。
 お客さんは皆、ぼかしの部分が効いてると言って買ってくれる」と
言われました。
今までは失敗でしかなかった手作業だから出る「にじみ」や「ゆらぎ」、
実はそれこそが人の手で染める「注染でしか出せない味」なんだと
気づいた瞬間でした。
 
 
中尾さんは更に、多くのクリエイターやデザイナーといった
作家とのコラボレーションをすることで、
見ていて楽しくなるような手拭いを数多く生み出すことにしました。
そのため、細かい絵柄やデザインにあわせて、
「注染」でグラデーションをつけたり、ぼかしをつけるだけでなく、
一部はプリントやシルクスクリーンを使用しての色付けも行うなど、
染色方法を使い分けています。
 


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 ⌂ 〒 599-8266
  大阪府堺市中区毛穴町338-6
 ☎ 072-271-1294

 
 
 
堺で生まれた「裏」も「表」も楽しめる手拭い

2.hirali (竹野染工)

 


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hirali(ひらり)は、
裏返すと表とは違う色の、リバーシブル柄の手拭いです。
「ロール捺染」(なっせん)による独自の両面染色技術をもとに、
「重ねの色目」という日本古来の色彩文化に着想を得たブランドです。
平成29(2017)年に誕生したばかりですが、
代官山蔦屋書店D&DEPARTMENTのフェアで商品が取り扱われるなど、
注目を集めています。
 

 
 
作るのは、「竹野染工」。
昭和36(1961)年の創業以来、手拭いや浴衣、布おむつなど
日用品用の生地を染めてきた会社です。
「ロール捺染」による
表と裏で柄の色が異なる「両面染め」を得意とし、
これが出来るのは、世界中で唯一、「竹野染工」だけです。
 
「捺染」(なっせん)とは、
染料を糊に溶かした色糊を使って布に模様を描き、
染料を固着した上で水洗いをして出来上がる染色技法を
指します。
 
「ロール捺染」は、専用の機械を使います。
円筒状の金型がぐるぐる回ることで
彫り込まれた溝に染料を溶かした防染糊が入り、
刃で不要な染料を削ぎ落とし、
生地に版を押し当てて柄が転写されます。
 
「ロール捺染」は量産可能なプリント手法として
ヨーロッパからおよそ100年前に輸入され、
たくさんに一気に刷れるということで栄えました。
しかし「ローラー捺染」は機械捺染でありながら、
全くのオートメーションという訳ではなく、
多くの部分が優れた職人の技によって支えられています。
現在、ロール捺染の職人の数は全国でも10人もいなくなって
しまいました。
 
 
現在3代目の寺田尚志さんは、伯父の先代社長の急逝により、
27歳で代表取締役に就きました。
当時、同業者の多くは受注減少や後継者不足で廃業。
そもそも「ロール捺染」は
大量生産の安物というイメージが強かったのですが、
実際は職人技が8割。
寺田さんは、何とか技術を認めてもらいたいと思い、
ここでしか出来ない技術、「ならでは」を作ろうと
プリントのように片側しか染めることが出来なかった「ロール捺染」を
裏表違う色で染める「両面染色技術」を開発しました。
日本でもこの染め方を出来るのは、
竹野染工」の職人・角野栄ニさんしかいません。
 

 
更に寺田さんは、ブランディングが分からないという会社を
大阪府がバックアップしてくれる「大阪商品計画」に講師として来ていた
Bianca(ビアンカ)の神崎恵美子さんにブランディングをお願いし、
4年の試行錯誤の末、ようやく平成29(2017)年に
両面染めの手拭い「hirali(ひらり)を発売しました。
 
 


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番組では、「竹野染工」を訪れ、
角野栄ニさんの職人仕事を放映していました。
 
工場内には、柄が彫刻されたロールがずらり。
柄毎、1色毎にあるので大変な量です。
ロールの円周は90㎝、ぴったり手拭い1本分の長さです。
1色ずつ染色するため、柄毎に何種類もの金型を使用します。
絵柄が変わる度につけ替えて、
使い終わった後はインクを洗ったり手入れをします。
 
柄が彫刻されたロールを作るのは、
京都の捺染用の金型を製造する「坂根彫刻所」さんです。
 
 
ローラー捺染による染色工程では、
「ドクターブレード」と呼ばれる刃を型にセットします。
次に「カラーバック」と呼ばれるボックスに
糊と顔料を調合した防染糊を入れます。
この「カラーバック」にはローラーが取り付けてあり、
このローラーが回転することで
防染糊が「彫刻ロール」の表面に運び出されます。
そして「彫刻ロール」が「ドクターブレード」の刃先を通過する際に、
余分な防染糊をこそぎ落とすことで、染色される仕組みになっています。
こうして染料を捺された生地は、
次に12本のシリンダー乾燥機を通過して110℃程度の温度で乾燥させます。
 
捺染機が動いている間、職人が手を休めることはありません。
プリント位置のズレがないか、
色ムラやかすれがないかなど目視しながら、
上下左右のロールの位置を微調整したり、
防染糊の注ぎ足しを繰り返します。
また、内側に火がついているんですが、
この火加減も染色内容などによるため職人技です。
 
金型の溝に染料が均等に行き渡るように
余分な染料を削ぎ落とす刃「ドクターブレード」は
手捺染のヘラのような働きをするものですが、
これは職人が自ら研磨して作っています。
 

 
 
hirali(ひらり)は、綿100%の和晒しの手拭いなので
肌にやさしいだけでなく、環境にもやさしい製品です。
 
また、プリントや他のロール捺染のように
糸の上に色を乗せるのではありません。
糸自体を染め上げているので、
注染手拭いのように柔らかな手触りと吸水性があり、
使い込むほどに風合いが馴染んできます。
 
いつか堺発信で、「今治タオル」のような地域ブランドを確立するのが
寺田さんの夢です。
 
 
竹野染工」にはもうひとつ、「Oo」(ワオ)というブランドがあります。
吸水性が高く、ふんわりと心地良い肌触りの「和晒」を
輪っか状に縫い上げ、首元を包むように作られた
ネックアンダーウェア「首の肌着」です。
 
夏場には、首にかけておくだけで汗を拭うことが出来、
日除けとしても使うことが出来ます。
一方冬も、コートの内側に巻いておくだけで、
風除けや襟元の汚れの防止にもなります。
 
見た目も可愛いだけでなく、
首から落ちることもないので、実用性も抜群です。
 

 竹野染工

  • 住所:〒599-8266
       大阪府堺市中区毛穴町355-3   
 
 
 

「てぬぐいフェス」

 
堺市では、毎年「てぬぐいフェス」が行われています。
「てぬぐいフェス」は、
いつも脇役の手拭いが主役になる唯一のお祭りです!
 
手拭い作りが体験できるワークショップや、
全国の手拭いブランドが集まるマーケット、
ライブやファッションショーなどのステージイベント、
アウトドアワークショップ、手拭い人気投票
「てぬぐいオリンピック」などが開催されています。
 

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