MENU

美の壺「海からの贈りもの 真珠」<File 446>

<番組紹介>
つややかな光沢と虹色の輝きが魅力の真珠。
 ▽近年、カジュアル使いに注目が集まっている。
  真珠ファンのスタイリスト・原由美子さんが、
  普段使いの極意を伝授!
 ▽蒔絵(まきえ)など
  伝統工芸と組み合わせたアクセサリーや、
  変わった形の真珠にこだわる職人の作品も登場!
 ▽歌手・夏川りみさんは、
  紅白歌合戦初出場の時につけた黒蝶真珠を紹介!
  故郷である沖縄・石垣島の思い出とともに語る。
 
<初回放送日:平成30(2018)年06月08日>
 
 
 
「海の宝石」と称えられる「真珠」は、
いにしえより人々に愛されてきました。
その魅力は、柔らかな光沢と虹色の輝き。
 
冠婚葬祭のイメージが強い「真珠」ですが、
モードの達人は日々のお洒落にこそと言います。
デザインも進化しています。
和の伝統との組み合わせから個性的な形まで。
 
自然が育む「真珠」に故郷への思いを重ねます。
貝が生み出す奇跡の輝き。
その魅力に迫ります。
 
 

美の壺1.白の中の色を楽しむ

 

「アコヤ真珠」の美しさの秘密
(「真珠科学研究所」真珠研究家・小松博さん)


www.youtube.com

 
「真珠」といってまず思い浮かべるのは、
白くて丸い「アコヤ真珠」ではないでしょうか。
その「アコヤ真珠」の美しさには秘密があります。
真珠研究50年の小松博(こまつひろし)さんに
「真珠」の一番の魅力はどこにあるのか聞いてみました。
 

 
「『真珠』の最大の魅力は、「テリ」じゃないかなと思います。
 簡単に言うと、「輝き」と「色」ですね。」
 
「輝き」とは、表面で反射する光の事。
ツヤツヤと光り、周りの景色を映し出します。
 
一方「色」とは、
真珠に下から光を当ててみると、全体にボウっと色が現れました。
これは光の色です。
 
 
真珠は貝殻を作る外套膜(がいとうまく)が分泌液を出し、
薄い層となって積み重なることで出来上がります。
その層の一枚一枚に光が反射して影響し合う事で、
色が現れるのです。
光を取り込みつつ生まれる真珠ならではの色。
 

 
「あれはやっぱり、生き物しか出来ない事ですね。
 最高の宝石になったという事じゃないですかね。」
 
いつまでも眺めていたい真珠です。
 
 

スタイリスト・原由美子さん


www.youtube.com

 
スタイリストの原由美子さんは、
昭和45(1970)年に『アンアン』の創刊に関わった他、
数多くの雑誌のファッションページに携わった、
日本を代表するスタイリストです。
 

 
原由美子さんは、長年、真珠のアクセサリーを愛用しています。
原さんと「真珠」との出会いは、大学生だった二十歳の頃。
祖母から譲り受けた指輪でした。
 

 
「『真珠』って、ちっちゃくて、可愛いなと思って。
 普段しても、全然気にならないから、
 お守りみたいに一時ずっとしてました。」
 
「真珠」はどんな服にも寄り添ってくれると感じた原さん。
スタイリストの仕事を始めてからは、
毎日、「真珠」のネックレスを着け、
それはいつしか原さんのトレードマークのようになっています。
 
例えば、「ロングネックレス」は
カーディガンの中に挟んでつけるのが原さん流。
目立ち過ぎず、かがんだ時にも邪魔になりません。
 
「真珠」をもっとカジュアルに楽しんで欲しいと原さんに、
その極意を教えてもらいました。
 

まずは、多くの人が冠婚葬祭用に持っている
「短めのネックレス」。
「自然にキレイに見えると思うんで。
 デニムの荒い作業着みたいなものにつけると
 気取った感じにならない」
 

「少し長めのネックレス」は、
ベージュのロングカーディガンに合わせました。
ボタンを留めて挟み込むのが原田さん流です。
「自然素材でスタイリングした時って、
 アクセサリー何にもなしでっていう事が多いんですけど、
 敢えて真珠着けると、ちょっと何か華やぎっていうか。
 馴染むのかなと思って。」
 

 
最後は、ちょっとゴージャスな感じの
「三連ネックレス」のアレンジ。
半分隠して、首元からさりげなく、カジュアルに。
ジャクリーン・ケネディがお手本だそうです。
「ジャクリーン・ケネディは、
 自分のお気に入りのネックレスをいろんな装いでしていて、
 いつもは出していたものを
 見えないようにしているのがあって、
 私の中では印象的で、
 こういう着方もあるんじゃないかなと思ってます。」
 

 
「真珠って、宝物っていうよりは、
 やっぱり使いこなすものだと思ってるんで。
 宝石箱に大切にしまい込むものじゃなくて、
 使って楽しむものだと思ってますけど。」
 

どんな素材や色にも映える真珠。
使い手の気持ちを柔らかく受け止めます。
 
 
 

美の壺2.みんな違って、みんないい

 

田崎真珠


www.youtube.com

 
昭和29(1954)年に神戸市で創業した「田崎真珠(たさきしんじゅ)
「マベ真珠」の養殖に成功したことをきっかけに、
仕入れ・加工から、デザイン・仕上げ・販売まで
一貫して手掛ける日本のトップジュエリーブランドとして躍進しました。
平成11(2009)年に「田崎」から「TASAKI」へと社名を変更しています。
 

 
TASAKI」では、これまでの伝統も守りつつ、
最近では、海外のデザイナーを起用して、
常識に捉われない新しいジュエリーを提案しています。
平成24(2012)年に、英・ロンドンを拠点に活躍中のデザイナー、
メラニー・ジョージャコプロス
(Melanie Georgacopoulos)さんと提携し、
M/G TASAKI(エムジー タサキ)というブランドを立ち上げました。

ジョージャコプロスさんのピアスは、
真珠自体に穴を開ける斬新なデザインです。
 
一見、シンプルなロングネックレスも、
真珠がカットされていて、断面が露わになっています。
様々な形で引き出される真珠の新しい魅力。
「真珠をカットしてみると生き物としての素性が見えてきます。
 たとえ養殖であったとしても
 ひとつとして真珠な同じものはないのです」と
ジョージャコプラスさんはおっしゃっていました。
 
 

「蒔絵パール」(「KARAFURU」黒田幸さん、高畑志寿賀さん)


www.youtube.com

 
東京・代官山にある真珠の蒔絵のアクセサリショップ
KARAFURU(カラフル)には、漆や螺鈿など、
日本の伝統工芸を用いたアクセサリーが並んでいます。
中でも真珠の上に蒔絵を描いた「蒔絵パール」が人気です。
 

 
 
オーナー兼プロデューサーの黒田幸さんは、
歌舞伎の興行関連企業に勤めた時に、
江戸時代から400年続く柄などを使った雑貨などを企画するうちに、
伝統工芸に魅かれるようになり、
平成23(2011)年に「KARAFURU」を設立しました。
 
黒田幸さんは、元々、蒔絵は可能性のある技術で、
金を使って絵を描く点もジュエリーと相性が良いだろうと
感じていたそうです。
「蒔絵ってこう、黒ですとか赤の漆器に描いてある
 イメージが強いかと思うんですけれども、
 日常の中で使うとなると、
 少し印象が強いかなという感じがして。
 それでは、何の上に蒔絵がのっていれば素敵なのか
 考えたところ、
 白と金の組み合わせだろうと。
 そこからパールに行き着いたのです」
 
けれども、真珠には蒔絵がのりにくいという問題がありました。
それを解決してくれたのが、
京都の漆屋「佐藤喜代松商店」の佐藤貴彦さんでした。
真珠に特殊な塗料をコーティングすることで、
蒔絵が可能になる方法を提案。
 

 
更に、新進気鋭の蒔絵師・高畑志寿賀(たかばたけ しずか)さんを
紹介してくれました。
高畑さんは、琥珀や貝などのアクセサリーに
蒔絵を施したことはあったのですが、
真珠は初めて。
それらとはまるで違う感覚。
仕上がりに不安があったとおっしゃいます。
 
日常使い出来るものするために、
黒田さんは幾何学的な和の伝統柄をリクエスト。
高畑さんは菊や花格子といった柄を提案、
2人のキャッチボールの中から伝統柄を生かした
「蒔絵パール」が誕生しました。
 
高畑さんは何にでも合うように、
細かい金粉を使って渋めの輝きに仕上げます。
落ち着いた金に引き立てられる真珠のしっとりとした質感。
日本の伝統工芸に新たな風を吹き込みます。
 
  • 住所:〒150-0021
       東京都渋谷区恵比寿西2-20-14 1F
  • 電話:03-6452-5427
 
 

東京・蔵前「Shinkai」ジュエリーデザイナ・ 眞貝 瑞季


www.youtube.com

 
東京・蔵前に、
真珠の形にこだわって作品作りをする人がいます。
彫金職人を経て、
自らのジュエリーブランド「shinkai」を立ち上げた
眞貝 瑞季(しんかいみずき)さんです。
 
眞貝さんの工房の引き出しには、材料の「真珠」がずらり。
丸い形のものから歪んだものまで、色も形も様々です。
かなり変わった形もありますが、
眞貝さんは、歪な形はどれも面白いとおっしゃいます。
 
自然が作り出した形を最大限生かす事で、
眞貝さんは、個性豊かなジュエリーを創作してきました。
角のように尖った真珠はモードなピアスになりました。
おへそがちょっぴり飛び出たみたいな表情のある指輪です。
 
新しい作品のための真珠を選ぶ眞貝さん。
「この子なんかは、
 ちょっと尻尾がピョッと生えてるような感じですよね。
 ちょっとこの辺に傷があったりもするんですけど、
 ちょっと加工して隠してあげたりとかするだけで、
 ぐっと魅力的になる子がいっぱいいるので。」
 
尻尾のような形をどう生かすか。
まず、真珠の一部を削り始めました。
削った部分に合わせて金の飾りを作ります。
金具から尻尾が覗きます。
最後に1㎜のダイヤを飾ると、
大きなうねりを感じさせるような、
生命力溢れる作品になりました。
 
いろんな形、いろんな色の「真珠」が
世に送り出される日を待っています。
 
shinkai flagship shop KURAMAE
  • 住所:〒111-0051
       東京都台東区蔵前3-6-1
       玉川ビル1F
  • 電話:03-5829-8206
  • オンラインショップ
 
 
 

美の壺3.おおらかな海が育む神秘の輝き

 

「黒蝶真珠のネックレスとピアス」(歌手・夏川りみさん)

 
沖縄県・石垣島出身の歌手・夏川りみさんには
大切にしているアクセサリーがあります。
故郷の石垣島で採れた黒蝶真珠のネックレスとピアスです。
 

 
「2002(平成14)年に「紅白」が初出場に決まった時に頂きました。
 うちの母が知り合いで何か真珠くれるってよって言うから、
 もらいに行こうって。
 そんな感じで軽い気持ちで行ったのは覚えてますけど、
 島の人みんなで応援しているから頑張ってねっていうのは、
 何か言われたような気がします。
 やっぱり「紅白」って、衣装が皆さん凄いじゃないですか。
 どうしたらいいのかなって思っていた時に、
 島のもので出れるっていうのは、うれしかったですね。」
 
 
夏川さんは石垣島で生まれ、14歳まで石垣島で暮らしました。
小さい頃から歌が上手で、歌手になって島を出る事が夢でした。
少女時代は退屈に感じたという石垣島でしたが、
夢が叶い、東京で暮らす今、その良さが分かります。
青い海と豊かな自然。
自分を育ててくれた故郷を誇りに思うように。
 
黒蝶真珠に対する見方も変わってきました。
「大人の母とかが普通に着けていて、
 素敵なのかなって思ってたんですけど、
 まだ私には早いよという感じだったんですが・・・」
 
 

「黒蝶真珠」(琉球真珠


www.youtube.com

 
夏川さんの「黒蝶真珠」は、
石垣島北西部、世界有数のサンゴ礁の広がる
キレイな川平湾の海で生まれました。
 

 
「黒蝶貝」が生息するのは熱帯・亜熱帯の海域で、
産地として「タヒチ」が有名ですが、
川平湾は養殖場としては世界の北限に当たります。
ですが、タヒチに比べると冬場の海水温が低いため、
貝の成長が遅く、
その分きめ細かく、テリの良い真珠が育つそうです。
 
黒蝶貝の黒い色は外套膜(がいとうまく)に含まれる
赤黄緑の色素が混ざり合って生まれるといいます。
川平湾の海の色を映したような緑色の輝きです。
 
今でこそ
質の良い「黒蝶真珠」を量産出来るようになりましたが、
そこには長い道のりがありました。
 


www.youtube.com

 
天然の「黒蝶真珠」は幻の真珠と言われていて、
何十万個に1個の割合でしか発見出来ないほど
貴重なものです。
その幻の「黒蝶真珠」を養殖しようと、
世界各国でいろいろ研究されてきましたが、
黒蝶貝は体液が多く、養殖には向いていません。
 
失敗を乗り越えながら、
昭和45(1970)年、石垣島の川平湾で
琉球真珠」さんが世界で初めて養殖に成功しました。
それからおよそ半世紀、
黒蝶真珠は石垣島の人達の誇りとなりました。
 

 
毎日、網を引き上げては、海藻などを取り除く・・・。
貝の健康を維持するために欠かせない作業です。
こうして、黒蝶真珠は
川平湾の自然の中でゆっくり育まれます。
 

 
「川平湾は自分たちの宝物だというふうに思ってます。
 これは、宝があるからこそ真珠が出来たりとという事ですので、
 この宝をいつまでもですね、
 輝く宝にしたいなというふうに思っています。」
 

 
川平湾が育んだ海の恵み、島のみんなの宝です。
 

 

f:id:linderabella:20210513110059j:plain