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美の壺「白磁」<File517>

<番組紹介>
食卓から世界を魅了!究極の色と形「白磁」の器。
透けるほどの薄さ、色香漂う地肌。
400年前、佐賀・有田の奇跡の土が生んだ最初の磁器。
白色を極限まで引き立たせる究極の“ろくろの技”。
ゆるぎない輪郭線の美。
近代陶芸の巨人・富本憲吉が遺した“ろうそくの炎”の極意とは?
民藝家、柳宗悦が魅せられた朝鮮白磁の神秘。
幻の大壺「満月壺」の復活に挑む!
世界が絶賛した白磁作家の“白き宇宙の器”とは?
 
<初回放送日:令和2(2020)年10月30日 >
 

 
真っ白な焼き物「白磁」。
白磁はきめ細かな白い土を高温で焼き締めたものです。
ガラス質を含み、硬くて透明で、
光が透けるほどの薄さのものです。
多彩な表情が無限の時へと誘う白磁の世界を
お楽しみ下さい。
 
 

美の壺1.白を味わう

 

大阪・曽根崎 工芸店ようび

 
大阪・曽根崎にある和食器店「工芸店ようび」には、
日本全国の匠が作り出した様々な器が並んでいます。
店主の真木啓子さんは白磁と出会って50年。
その魅力は計り知れないとおっしゃいます。
ご自宅で毎日愛用している白磁を見せて頂きました。
 

 
  • 住所:〒530-0057
       大阪府大阪市北区曾根崎1丁目8−3
  • 電話:06-6314-0204
 
 

日本白磁発祥の地 佐賀県有田 泉山磁石


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焼き物の町、佐賀県有田。
古いレンガの煙突が長い歴史を偲ばれます。
華やかな色絵の器で溢れています。
絵付けの素地となるのが、真っ白い磁器です。
 
 
およそ400年前、磁器の原料となる、陶石が発見され、
日本で初めて、有田で白磁が焼かれました。
 
泉山は江戸時代から掘り続けた採石場です。
泉山の石の特徴は、
僅かに鉄分が含まれているため、黒い点が現れることがあります。
真っ白にするには、鉄分の除去が必要でした。
 
「この赤い部分が鉄分なんで、
 これをハンマーで取ってやって、
 より白い焼き物になるようにやってます。」
 
ハンマーで鉄分が除かれた石は、
次に粉末して水に入れ、
上澄みの細かい粒子だけを白磁の土に使います。
 
しかし これだけでは終わりません。
大きな磁石で砂鉄を集めるように、
鉄分を限界まで取り除いていきます。
円盤状の磁石から赤く流れ出てくるのが鉄分です。
多くの時間と手間を掛けて作られる、とびきりの白です。
 
泉山磁石場は、
昭和55(1980)年3月24日に国の史跡に指定されています。
現在は休鉱中で採掘されておらず、
今は泉山の原料をほとんど使われていません。
 
磁石場の隣にある「有田町立歴史民俗資料館」 には、
有田焼の技法、道具、陶片などが展示されていて、
日本で初めて磁器が焼かれた有田の歴史や
有田焼の中心地となった皿山地区の人々の暮らしを
知ることが出来ます。
 
  • 住  所:〒844-0001
         佐賀県西松浦郡有田町泉山1−4−1
  • 開館時間:午前9時~午後4時30分
  • 休 館 日 :毎週月曜、年末年始
  • 入 館 料 :一般100円、
         高大生50円、小中生30円(団体割引あり)
  • 電話番号:0955-43-2678
 
 
<参考> 陶芸用粘土 工場見学 有田焼 陶土ができるまで


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有田出身の陶芸家・西山 正さん(佳秀窯

 
白磁の第一人者で、有田焼ろくろ成形の名手、
重要無形文化財指定(人間国宝・平成7年認定)の
陶芸家・井上萬二さん。
その井上さんに轆轤の技を習い、修業した
佳秀窯の西山正(にしやま ただし)さんが
井上さんから最初に教わったのは、意外なものでした。
 

 
「最初の半年ぐらいは、焼き物に敷く台を作ったんですね。
 「ハマ」って言う、
 窯入れの時に焼き物と棚の間に置く小さな台。」
 
毎日「ハマ」を作り続けて半年後、
やっと井上さんに認められるようになりました。
すると、開眼したように轆轤の技が進歩していきました。
 

 
回っているのに、まるで静止しているかのよう。
一分の隙もない、揺るぎない造形。
今日も西山さんは、純白の世界を作り上げます。
 

 
白磁、青磁の造形の美しさに魅了され、
轆轤による手造りの温かさ、しなやかさを
家庭の中に届けたいという思いで、40数年。
 

 
西山さんは、天草の特上質の陶石を使用し、
鉢、花器、花瓶など大物から、日常食器に至るまで、
全て手作りで、轆轤成形にこだわって、
ひとつ、ひとつ思いを込めて制作し続けています。
 

 
  • 住  所:〒844-0017
         佐賀県西松浦郡有田町戸杓丙761-3
  • 営業時間:9:00~18:00
  • 定 休 日 :不定休
  • 電話番号:0955-42-3493
 
 

美の壺2.ぬくもりを味わう

 

日本民藝館(東京・駒場)

 
手仕事が生んだ美しい工芸品を展示する日本民藝館
長年 ここで仕事をしてきた尾久彰三さんが最も好きなのは、
17世紀 朝鮮半島で作られた白磁だそうです。
 

 
日本民藝館の創始者・柳 宗悦は、
大正3(1914)年に、柳を訪ねた来た
韓国(当時は朝鮮)で小学校教師をしていた
浅川伯教が持ってきた手土産、
朝鮮陶磁器の美しさに魅了されます。
 

 
そして、大正5(1916)年以降、度々朝鮮半島へ渡り、
朝鮮工芸に親しむようになりました。
当時の朝鮮では、
伝統の白磁は 忘れ去られようとしていました。
失われゆく白磁に、柳の心は奪われたようです。
 
  • 住所:〒153-0041
       東京都目黒区駒場4丁目3−33
  • 電話:03-3467-4527
 
 

陶芸家・崔在皓(山口県)

 
韓国生まれの陶芸家・崔在晧さんは
平成16(2004)年から日本に移り住み、母国の白磁に挑んでいます。
ソウルの美術館で見た『満月壺』という白磁作品に魅せられて、
白磁を勉強しようと決めたそうです。
 
 

美の壺3.白き宇宙

 

人間国宝・富本憲吉

 
富本憲吉(とみもと けんきち、明治19年-昭和38年)は、
奈良県生駒郡安堵町出身の陶芸家です。
色絵に金銀彩を加えた華麗な技法を完成させ、
羊歯文様などによる独自の作陶様式を確立し、
昭和30(1955)年2月15日に、
第1回の重要無形文化財技術指定保持者(人間国宝)に認定されました。
また、昭和36(1961)年には「文化勲章」を受章しました。
 
「模様の富本」と言われましたが、
番組では色絵とは対極にある名品「白磁八角壺」が紹介されました。
しっとりとしたやわらかさと深く沈んだ気品が漂う白磁です。
 
 
富本憲吉は、
色彩や模様によるごまかしが一切きかない白磁には、
轆轤で整形した段階で最も形の整ったものを用いたそうです。
 
 

陶芸家・森野泰明さん

 
富本が書いた焼き物の指南書が残されていました。
ガリ版刷りで、図案や土のことから、
工房の作り方まで記してあります。
 

 
指南書の持ち主である陶芸家の森野泰明さんは、
大学時代に指南書を教科書として、富本に教えを受けました。
 
指南書には、こんな記述があります。
「白磁の削りの済んだ凹凸を見るには、
 暗がりで、一本のろうそくの火で見るに限る。」
 
ろうそくを近づけると、
白磁の表面の僅かな凹凸まではっきりと見えてきます。
富本は、削っては確かめ、また削り、
八角形の放つ、絶妙なラインを追い求めました。
 
 

陶芸家・黒田泰蔵さん

 
静岡県伊東市富戸の海や島を見渡す断崖の上、
何と約2000坪という広大な敷地に
世界的に高い評価を得ている
陶芸家・黒田泰蔵(くろだたいぞう)さんのアトリエがあります。


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黒田さんは、昭和21(1946)年1月1日、滋賀県能登川生まれ。
昭和41(1966)年、仏パリに滞在。陶芸家の島岡達三と出会います。
その後、ニューヨークに滞在後、
カナダ・ケベック州ノース・ハートレーで
陶芸家のGeatan Beaudin(ゲータン・ボーダン)に師事し、
陶芸を始めます。
カナダの製陶会社“SIAL”にてデザイナーとして勤務、
カナダにて築窯した後、
昭和56(1981)年に帰国し、翌年、静岡県松崎町に築窯。
平成3(1991)年、静岡県伊東市に築窯。
平成4(1992)年に、初めて白磁を発表。
生涯をかけて、自己表現として究極の白磁を求めて活動され、
美しい造形と唯一無二の世界観で、白磁をアートの世界に押し上げ、
国際的に高い評価を受けました。
 


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繊細な指先から生まれる自在な形。
張り詰めた緊張感と緩く弛緩するリズムのせめぎ合いが
独特のフォルムを作り出します。
 
そんな黒田さんの作品を代表する造形が「円筒」です。
轆轤の回転運動によって、垂直に引き上げられた円筒形は、
円と直線で構成されるシンプルで、個性を押し殺したような形です。
 
「それが真骨頂。こんなもんですよね。」
黒田さんが今 最も熱中している形です。
 


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きゃしゃな立ち上がり、やがて丸く張り出す肩、
そして細く、すぼまる口元。
相反する力が、不思議なまでのエネルギーを放ちます。
釉薬を使わないで、焼き締めた艶消しの白。
僅かに黒田さんの指先の痕跡をとどめます。
ひき上げられた口が
「使う」という実用から解き放たれて、虚空へと誘います。
黒田さんの名を、一躍、世に知らしめた作品です。
 
「人には「黒田さん まだ進化してるね」って言われるし、
 自分自身も そう思ってます。
 でも何か、最後まで緩くてもいいから、上がってたいというのは
 憧れとしてありますよね。」
未知の世界は どこまで続いていくのでしょう・・・。
 
とおっしゃっていらっしゃった黒田さんですが、
残念ながら、今年、令和3(2021)年4月13日にお亡くなりになりました。
75歳でした。
 


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