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美の壺「日本の敷物 畳」 <File541>

まるで芸術品!熊本県八代地方の、
い草農家が生み出す最上の「畳表」
 
 ▽龍にマリリン・モンロー!?
  畳の目を駆使して生み出す「畳アート」
 ▽400年受け継がれてきた美意識。
  茶の湯の所作と畳の深い関係
 ▽織田信長・豊臣秀吉・武田信玄ら
  武将の肖像画に描かれたへり。
  それぞれの意味とは?!
 ▽畳替えする家族に密着!
  青畳の匂いと感触に2歳の娘は大喜び
 ▽厚切りジェイソンが草刈邸の畳を世界に発信?!
 

 

和室の美しさを象徴する「畳」は、
1300年前から 私達の暮らしを 足元で支えてきました。
青畳の清々しい香り、滑らかな肌触りと弾力、
そして、心地よ良いすり足の音。
畳は茶の湯を始め、様々な日本の文化と深く関わってきました。
 
最近人気なのは、モダンな正方形のヘリのない畳。
他にも畳のニューウエーブが続々登場しています。
今日は畳の魅力を たっぷりと鑑賞します。
 

美の壺1.畳表に心寄せて

 

熊本県八代市でいぐさを作る、早川猛さん

 
畳のサイズは 地域によって様々ですが、
縦横およそ2対1の長方形が一般的です。
畳は、
幾重にも重ねた稲藁を締め付け圧縮して作られた「畳床」に、
経糸に天然のイグサを編みこんで織られた「畳表」を上から被せ、
長辺に「畳縁」を縫い付けることで作られています。
 

 
熊本県八代は、
畳の原料となる国産いぐさの9割以上を栽培する一大産地です。
「いぐさ」は、
直径が1mm程と針のように細くて固く、
長さが1m50cm~60cm、薄黄緑色をしているものが
理想とされています。
 
早川 猛さんは、いぐさを育てて35年になるベテラン。
5月の初めは、翌月に迫った収穫に向けてのラストスパート。
倒れて傷がつかないように専用の網を張る
「網張り」という作業をします。
目標の高さはおよそ150cm。
10日毎に10cmずつ網の高さを上げていきます。
 

 
いぐさを織って「畳表」を作るのも
早川さん達いぐさ農家の仕事です。
 
昨年刈り取ったいぐさを泥染めにして乾燥させます。
穂先や根元は切り落とし、色や太さが揃ったいぐさを使用します。
乾燥したいぐさに水分を補い、織りやすくします。
畳専用の機械で、麻の縦糸にいぐさを左右に送り込み織っていきます。
最後の仕上げとして手作業で目を整えます。
紹介していた畳表には、およそ8000本と
通常のおよそ1.5倍のいぐさが使われています。
目が密に詰まった、滑らかで美しい畳が出来ました。
 
早川猛さんは、天皇杯や農林水産大臣賞を複数回受賞されている
有名生産者さんです。
 

 

 

岐阜県羽島市「山田一畳店」
(畳アーティスト・山田憲司さん)

 
山田一畳店」は、
岐阜県羽島市の明治2年創業の畳店の工場です。
5代目・山田憲司さんがこれまでに制作した畳は、
多角形や曲線を描くものなど、ユニークなデザインです。
 
山田さんは、畳はすごく珍しい床材だと言います。
世界中見渡しても、畳しかない素材感だとか、
後は光を当てた時の変色具合とか、
他にはないような良さがあるので、
そういった畳の良さとをもっと引き出して
伝えていきたいとおっしゃていらっしゃいます。
 
山田さんは、
畳の目の向きによって見え方が変わる特性に注目しました。
例えば このマリリン・モンロー。
「濃い青」「薄い青」「白」の3色の六角形でデザインされています。
この3色を、縦、横、斜めと、
畳の目を変えることで表現します。
 
今 取り掛かっているのは、「龍」をデザインした畳です。
全て異なる形に畳表を貼ります。
スチームや合成接着剤を使って曲線に沿わせます。
試行錯誤の末に辿り着いた手法です。
201ピースの畳を、8畳の和室に敷いていきます。
およそ2時間の作業の末、「龍」の畳が完成しました。
反対側から見ると、白い龍に見えてきます。
畳の色は一色ですが、畳の目の向きを変えることで、
模様が浮かび上がって見えるのです。
 
  • 住所:〒501-6241
      岐阜県羽島市竹鼻町2382−1 
  • 電話:058-391-3033
 
 

美の壺2.今に伝わるおきてあり

 

畳と茶の湯の関係
「茶道家 北見宗幸」

土壁、木造建物、畳・・・茶室は全て自然で出来ています。

そして、畳は茶道の所作と深く関わっています。

畳の目が「物差し」の役割を果たしているのです。
茶道会館理事長で、
茶道の文化や歴史に詳しい茶道家の北見宗幸さんが
紹介して下さいました。
北見さんは、裏千家茶道教授でもあり、
「畳ソムリエ」として、
畳のすばらしさを世界に広める活動をしているそうです。
 

 
 
畳のひと目は、およそ1.5cmが目安です。
例えば、「水指」の位置は、へりから16目の位置。
手を開くと16目、
座る場所も、へりや道具からおよそ16目になります。

 
釜をかける「風炉」の位置も、畳の目で決められています。
「風炉」の敷板は、端から畳7目です。

 
「棗」(なつめ)を拝見する時は、
へりから3目空けると、道具が引き立つと言います。

 
  • 所在地:〒169-0075
        東京都新宿区高田馬場3丁目39−17   
  • 電 話:03-3361-2446
 
 
 

上野 老舗畳店「クマイ商店」
(熊井千代子さん)

現存する最古の畳は1300年前の「正倉院宝物」のひとつで、
聖武天皇がお休みになられた
「御床」(ベッドのような寝台)の上に置かれていた畳の断片です。
構造はマコモ製の筵(むしろ)を重ね合わせて芯材として、
表面にはい草製の筵(むしろ)、裏面は麻布になっています。
畳の縦の長さは不明ですが、
幅の長さは最大辺がおよそ118cmあり、御床の幅と近い事から
118cm程度であったと思われます。
また、畳縁ではありませんが、横を覆っていた形跡があります。
既に、畳床・畳表・畳縁が揃っていて、今の畳とあまり変わりません。
 
元々、畳は脚付きの台に敷いて使われていました。
当時の畳は、貴重だったため、
部屋を囲むように身分の高い人が座る所だけに敷かれていました。
その後、部屋全体に敷き詰められるようになりました。
 
畳のへりにも歴史があります。
東京・上野にある、
徳川家ゆかりの寛永寺に敷かれた畳は、およそ150畳。
こちらの畳に使われているのは 「高麗縁」という特別なへりです。
 
寛永寺に畳を納めるのは、
老舗畳店「クマイ商店」の熊井千代子さんです。
「高麗縁」(こうらいべり)が用いられたのは、寺院だけではありません。

 
位を表すものとして、武将たちの肖像画にも見られます。
織田信長は、白と黒の大きな紋の高麗縁。
武田信玄は、小紋の高麗縁です。
そして豊臣秀吉の肖像画のへりは・・・
何と、天皇・三宮(皇后・皇太后・太皇太后)・
上皇が用いた畳にも使われた、
最も格の高い 「繧繝縁」(うんげんべり・うげんべり)。
畳や畳のへりは、時代や使われる場所によって、様々な意味がありました。

 
  • 住  所:〒110-0002
         東京都台東区上野桜木2丁目13−3 
  • 電  話:0120-660-901
 
 

美の壺3.和室を “決める"

 

東京都北区にある
老舗「八巻畳工業」の畳職人・八巻 太一さん

 
「八巻畳工業」は、東京北区にまる創業110年の老舗畳店です。
四代目・八巻太一(やまき たいち)は、
今では珍しい手縫いの技を継承している一人です。
 
道具は畳作りを支えてくれるもの。
古いものだと曾祖父の代から使っている物もあるそうです。
五寸五分の針で、畳表をきちんと縫いつけることで
表がピーンと張り、「いすじ」を真っすぐにします。
「いすじ」とは、畳表に織られたいぐさ筋のことです。
畳づくりでよく見かけるポーズ、肘でならして糸の張りを一定にします。
出来上がった畳は、たるみや歪みのない真っすぐで気合の入った畳です。
まるで八巻さんの性格を表しているかのようです。
 
八巻さんは、毎年いぐさの産地八代で農作業を手伝っているそうです。
 
  • 住所:〒114-0023
       東京都北区34 滝野川2丁目34−4   
       コーポヤマキ 1F  
  • 電 話:03-3917-9827
 
 
この日、畳替えをしたいという家族がやって来ました。
関根毅さんご夫妻と、
もうすぐ3歳になる娘の結菜ちゃんの3人家族です。
 
畳替えをするのは、およそ20年前の畳。
どれがいい? 家族みんなで畳のへりを選びます。 
サンプルを前に なかなか決められない 関根さん夫妻。
すると…。 桜がいい。 これ。 これだね。
結菜ちゃんが選んだ 赤とピンクの小紋のへりに決定。
 
古い畳は一旦 工場へ。
夕方までに張り替えを終え 部屋に戻します。
工場で新しい畳表を付けます。
へりは結菜ちゃんの選んだ あの桜模様。
 
一般の住宅用には、主に機械を使ってへりを付けています。
畳の端を包むようにへりを付けるのは、手縫いと同じです。
手縫いの3分の1の時間で 6枚の畳が仕上がります。
およそ4時間後、畳の張り替えは完了!
 
関根さん宅の和室に畳を敷き、縁を合わせます。
ピンクがお部屋に映えます。
いぐさがいい匂いだとと結菜ちゃんは大喜び。
結菜ちゃんはもうすぐ3歳。
今日からは この畳と一緒に成長します。
 

 

 
 

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