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イッピン「モダンな急須でホッと一息 愛知県・常滑焼」

<番組紹介>
今、自分だけの「ホッとひと息」の時間を楽しむ道具
「急須」が、密かなブーム。
なかでもコロンとした、まん丸い形の急須が大人気。
その産地は、愛知県常滑市。
ろくろを使って作り上げる、
おしゃれな見た目と使いやすさを兼ね備えた、
丸い急須作りの秘密とは?
ほかにも、今、注目の淡い色合いのティーポット、
不思議なマーブル模様の急須が登場。
職人たちのアイデアと手わざで生み出される、
常滑焼の魅力に女優・鈴木ちなみが迫る!
 
<初回放送日:平成27(2015)年12月8日>
 
 
愛知県の知多半島にある
常滑市を中心に焼かれる焼き物「常滑焼」は、
「日本六古窯」(ろっこよう)のひとつに数えられ、
その起源は平安末期まで遡ります。
 
 
 
「常滑焼」を代表するのが、
この地で産出される粘土に含まれる鉄分を
赤く発色させることで生まれた
「朱泥」(しゅでい)の急須です。
 

 
鉄分を含んだ陶土は、お茶のタンニンと反応し、
渋みを和らげまろやかなお茶にしてくれるといいます。
 
 

1.朱泥炭化 千段ポット(「北龍」三代目・梅原タツオさん)


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「北龍」の3代目・梅原タツオさんは、
「常滑焼」の未来を担う若手のホープです。
日本国内の賞を数々と受賞しています。
梅原さんの作る急須はどれもフォルムがキレイです。
中でもコロンとした、まん丸い形の急須は大人気です。
 

 
丸型の急須は、茶葉が対流しやすいため、
緑茶やほうじ茶などは勿論、紅茶や番茶など、
あらゆるお茶の香りを引き出してくれます。
 

梅原さんに、
丸い急須の製造工程を紹介していただきました。
 
梅原さんは、陶土を作るところから
全ての工程をお一人で手作業で行っています。
 
まず、常滑の土、粘りを出す土、
艶を出す土、酸化鉄などを
梅原さん独自の配合で混ぜ合わせて、
半日程の時間をかけて煉り上げていくそうです。
独自の陶土配合により上品な艶をもった急須は、
使い込むほどに表情豊かに育っていきます。
 
 
急須は、胴体や持ち手など5つの部品からなります。
全てろくろを回しながら作ります。
 
急須の蓋が乗る溝、「棚」と呼ばれる部分は、
三角に尖った親指の爪を当てて作ります。
この時添えた人差し指で、溝の下部の生地を太く補強します。
これにより、蓋と胴がピタっと合わります。
 

 
細い注ぎ口は、先端にいくほど薄く作り、
先端は曲げて涙袋のようにする「ベロ出し」の工程で
茶切れの良さを生み出すのだそうです。
 

 
金属の茶漉しを使わなくてもいいように、
「セラメッシュ」という陶製の茶こしが胴体につけます。
急須の中に茶葉を入れてお湯を注ぐだけで、
余計な金属臭や味の雑味がのない、
美味しいお茶を最後の一滴まで淹れることが出来ます。
 

 
取っ手や蓋のつまみを持ちやすく、
手にピッタリと収まるようにように作ります。
 

 
こうして作った部品を貼り付けた急須は、
1100度の窯で15時間焼くと完成です。
 
梅原さんは、お茶を入れて待つ数分間、
ほっこり出来るように丸い形の急須を作ったと
おっしゃっていました。
 
北龍
  • 住所:〒479-0823
       愛知県常滑市奥栄町3丁目38
  • 電話:0569-35-4384
 
 
 

2.「TOKONAME」シリーズ(山源陶苑)

昭和42(1967)年に常滑焼の窯元として創業した
山源陶苑(やまげんとうえん)は、
問屋の下請けとして業務用の甕を製造していましたが、
時代の変化とともに産地が衰退したことから、
厳しい状況が続いていました。
 

 
3代目・鯉江優次(こいえゆうじ)さんは、
「伝統を継承し伝統を更新する」をモットーに、
先人達が培ってきた技術や素材を活かしながらも
これまでのイメージをがらっと変える
新しい「常滑焼」の開発しました。
陶磁器業界は、作り手は「職人」、売り手は「問屋」という
分業体制でした。
常滑焼の可能性を確信し、
「いつかは継ぐものだと思っていた」鯉江さんは、
大学卒業後、和食器の大手問屋「アイトー」で勤務し、
消費者の視点での売り方を学びました。
そして近い将来、作り手自身で売る時代が来ると
直感的に思ったそうです。
 
常滑に戻った鯉江さんはまず、
オリジナルのブランド「MOM Kitchen」を立ち上げ、
窯元自ら販売をスタートさせます。
 
それから10年、自社ブランド「TOKONAME」を発足し、
朱泥よりも鉄分の少ない「白泥」(はくでい)という土を使い、
顔料を加えることでパステルカラーで仕上げた
カラフルな「常滑焼」の茶器シリーズを発表すると
瞬く間に新聞、雑誌、TVなどに取り上げられ、
これまで「常滑焼」に馴染みのない若い世代や
海外の顧客にも好評を得ました。
 
平成27(2015)年には原料置場を改装し、
ショップ、カフェ、体験教室を併設した
旗艦店「TOKONAME STORE(トコナメストア)
オープンさせました。
TOKONAME」には、
「白泥」と呼ばれる白い土が使われています。
この土は、顔料の色を暗くする成分が含まれていた土から、
300回以上のテストを繰り返して
その成分の除去に成功して生まれたものだそうです。
そこに様々な色の顔料を入れて、
ホワイト、ピンク、ブルー、ライトグリーン、
イエロー、グレイの6色の淡くて可愛いパステルカラーの
「ティーポット」「カップ」「プレート」を作っています。
更に、より多くの人に毎日使ってもらえるよう、
効率良く、安定した生産が出来るように、
「石膏型」を用いた作り方を採用しました。
まず、土を水に溶かした「泥漿」(でいしょう)を石膏の型に薄く流し、
石膏に水分を吸収させて作ります。
1時間程で2㎜程度の厚みの土が積もったところで石膏から取り出し、
ろくろで仕上げます。
茶こしにもこだわりがあり、細かい穴はひとつずつ手で開けます。
釉薬をかけずに、高温で焼き締めているため、
きめの細かな土肌そのままを感じることが出来ます。
 
  • 住所:〒479-0832
       愛知県常滑市原松町6-70-2
  • 電話:0569-36-0655
  • TOKONAME ONLINE SHOP
 
 
 

3.憲児陶苑

 
憲児陶苑(けんじとうえん)の堀田拓見(ほったたくみ)さんは、
レトロモダンで可愛い、
不思議なマーブル模様の急須を作っています。
赤、白、薄い緑が地層のように縞を作る模様は、
外国人にも喜ばれているそうです。
 

 
常滑にはいろいろな技法がありますが、
堀田さんは「練り込み」という手法で作成しています。
 
まず白い土に、赤と緑の3つの色土を
サンドイッチ状に平たくして重ね、
切っては横に重ねて土をこね、土の層を作っていきます。
これをろくろびきで成形し、乾燥後にカンナで削ると、
表面は滑らかになり、地層のような模様が浮かび上がります。
憲児陶苑さんの作品は「水玉模様」が特徴。
これは「飛びカンナ」を表面に当てて、
凸凹の模様を付けます。
 


 
堀田さんのお父様は元々、
渋い黄色や黒の「練り込み」を作っていましたが、
後から白の「練り込み」を作るようになりました。
堀田さんは、もう少し他の色でも作れないかと思い、
ピンクや水色などのカラーバリエーションを作りました。
 
憲児陶苑
  • 住所:〒479-0825
       愛知県常滑市山方町1丁目21 21番地
  • 電話:0569-35-3467
 

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