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イッピン「デジタルな日常に木の優しさを〜福井 木工製品〜」

<番組紹介>
福井で発展した漆器やタンスづくり。
その伝統の技をいかして、
現在の暮らしにあった日用品が作られ始めた。
それは、高度な機能と木の優しさをあわせ持つ。
職人の技に迫る。
 
福井では昔から、豊かな森林資源を利用した
漆器やタンスづくりが盛んだ。
今、そうした伝統工芸の技をいかして、
意外なものが作られ始めた。
木でできたパソコンのキーボードやUSB、
またスピーカーなど。
木が持つ優しさが感じられると好評だ。
そこには、どんな職人の技が生きているのか。
タンス職人の指し物の技。
漆工芸の木地師による磨きの技。
さらにより使いやすくするための、
細やかな工夫。それらに焦点を当てていく。
 
 

1.kicoru(小柳タンス店)


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福井県越前市にある「小柳箪笥店」は、
明治40(1907)年に指物屋として創業しました。
その100年以上の伝統と技術を継承しつつ、
越前箪笥、時代箪笥、桐箪笥、オーダー家具、建具といった、
時代の変遷に則したモノづくりを今も続けいらっしゃいます。
 
「kicoru」(きこる)は、平成26(2014)年に、
「小柳箪笥」の四代目・小柳範和さんがオープンした
セレクトショップ&アトリエです。
 
小柳範和さんは、19歳の頃より木工職人としての修業を始め、
30歳で「家具手加工1級技能士」、
翌年に「職業訓練木工科指導員免許」を取得。
代々、語り継がれてきた伝統と指物技術を今も尚継承し続けながらも、
木材を用いた型にはまらないクリエイティブなモノづくりを追求。
伝統工芸品である越前箪笥を広く知ってもらおうと
「kicoru」(きこる)オープンしました。
 
「kicoru」(きこる)とは、木にこだわるということ。
種類によって木目や香りが全く異なる木材の面白さを伝えるため、
木製スピーカー「kicoeLe」や
積みにくい積み木「積めん木」、
福井県優良観光土産品「優秀賞」を受賞した「縁起柄コースター」など、
オリジナル商品も展開しています。
 
 
また、アトリエでは、製作に使う道具や漆塗りの作業風景を
ガラス越しに見学することも出来ます。
ここでは定期的にワークショップも開催されています。
また、越前箪笥やオリジナルの木の家具や雑貨のある
ショールームエリアもあって、こちらでは越前箪笥の展示と共に、
「kicoru」(きこる)のお洒落な家具や雑貨が展示販売されています。
 
 
小柳範和さんは、5年前、
タンス作りの技でスマートフォン用の木製のスピーカー
kicoeLe」を作り出しました。
釘など、木材以外の材料を一切使わない
指物の技術を使った、モダンでシンプルな形で、
電池も電源コードもないのに、音が大きくなるスピーカーです。
 
「タンスを知らない人が圧倒的に多い。
 タンスの技術を応用することによって、
 より身近なアイテムになるんじゃないか。
 タンス職人らしいスピーカーを作ってやるぞ。」
そう思って作ったのだそうです。
 
モダンでシンプルな形を可能にしたのが
引き出しなど、薄い板を組み合わせる時に使われる
「挽き込み留接ぎ」(ひきこみとめつぎ)という指物の技です。
 
スピーカーは、二つの同じ大きさの木材を90度に繋いで出来ています。
それぞれの角材の角を45度にカットして、繋ぎ合わせます。
接着剤を使って貼り合わせるだけでは、耐久性の上で問題があります。
そこで登場するのが、「挽き込み留接ぎ」。
角に2本切込みを入れ、同じ厚さの板を挟み、
はみ出した部分を切り落とせば、十分な強度のある
スッキリと美しい形のスピーカーが出来上がりました。
 
そして肝心なのは音。
スピーカーの中に空洞になっています。
スマホから流れる音は1か所から入り、空洞の中を通って、
上下2か所の開口部から大きくなって流れています。
その内部は、こうなっています。スマホから出る音は開口部から出るのです。
 
どんな空洞を造れば音を大きく出来るか。
当初、メガフォン型を考えましたが、これで満足はしませんでした。
コンサート会場の天井や壁が平らではなく凹凸があることから、
空洞の中に様々な起伏を取り入れてみましたが、上手くいきません。
そこで、普段何気なく接していた飾り金具の形から、
メガフォン型をベースに波型の凹凸を付けた形にしてみると、
小柳さんが待ち望んでいた音が出ました。
専門家の分析によると、同じ間隔でつけられた波型が、
音の勢いを削ぐことなく送り出していくためだそうです。
 

kicoru(小柳箪笥店)

  • 住  所:〒916-1221
         福井県越前市武生柳町10-7
  • 電  話:0778-22-1854
  • 営業時間:10:00~19:00
  • 定 休 日 :不定休
 
 

2.Hacoa

 
年商10億円以上を売り上げる、木製デザイン雑貨ブランド「Hacoa」。
「Hacoa」が意識しているのは、
福井県鯖江市の伝統工芸「越前漆器」の木地師が培った技術と、
時代に即したデザイン性だそうです。
 

 
プラスチック成形技師をされていた市橋人士(いちはしひとし)さんは、
義父で角物木地師の山口怜示(やまぐち・りょうじ)さんの技術に魅せられ、
山口木工所に入門、漆が乗りやすくする
木地をどこまでも滑らかにする磨きの技、その基本を叩き込まれました。
そして製品が出来上がると、製品をバッグに詰め込み上京、
飛び込みで営業をしました。
 

 
ところが漆器は分業制で、丸物師や角物師が木から形を作り、
塗師が漆を塗り、金紛で模様をつけるのは蒔絵師。
分業制だから
どこかが閉じてしまうと昔のスタイルでは製品も作れない。
流通経路も問屋が握り1つに絞られている。
だったら、漆を塗らない木地の製品を作れば、
しがらみから解き放たれると思い、
会長・山口さんの製品とは別の木製の雑貨を手掛けるため、
平成13(2001)年に「Hacoa」ブランドを設立。
「Hacoa」とは、
市橋さんが「角物(かくもの)師」だったことから、
角物の別名「箱物」(はこもの)という伝統的なものに、
時代が求めるプラスアルファを加えているという意味で、
haco(箱)+α(プラスアルファ)で「Hacoa」です。
 

 
現在、福井県の本店の他、東京に5店舗、
仙台・横浜・京都に1店舗、愛知、大阪に2店舗の直営店を展開。
直営オンラインストアの他、楽天市場「木香屋」も。
平成31(2019)年1月には新業態として
チョコレートショップ&ラボ「DRYADES(ドリュアデス)」、
6月にはショップとものづくり拠点、イベントスペースなどが集結した
「Hacoa VILLAGE」をオープン。
年商10億円以上を売り上げる会社となりました。
 

 
最初にHacoaのロゴを付けて世に出したのは
「木―ボード」です。
樹脂アレルギーに悩むお客様の要望から作られた商品です。
プラスチックのキーボードに触れないので、
指で触れるところを、
全部木で作ってくれないかというものでした。
出来上がった商品は評判を呼び、
アレルギーではない人からも注文を受けます。
 


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市橋さんは
「世の中の樹脂製品を全て木に変えてやる」という勢いで、
気持ちを和ませてくれる木を使って、
パソコンのキーボードやマウスなど、
デジタル時代の日用品を作っていきました。
伝統の木地作りの技が新たな活路を切り拓いています。
 

 
木地作りの技が生きているのが「USBメモリー」です。
蓋を閉めると、木目がピタリ。どこが切れ目かわかりません。
指触りも気持ちいほど滑らか。
 
USBを作るのは自動工作機。
職人の技がプログラミングされています。
しかし、常に職人が機械につきっきりで、
微妙な調整を行わなくてはなりません。
USBの製造を任されているのは新門励起(あらかどれいき)さんです。
歯の当て方、彫るスピードを間違うと、
製品が台無しになってしまいます。
慎重に機械を調整します。
この調整に職人の腕が掛かっているのです。
 

 
蓋はスーッと入ってスッキリと締まり、
抜く時もフニュっと抜けてくるような、
気持ちいい感覚です。
 
蓋の内側の部分ある小さな突起が
蓋をした時に端末を挟み、抜けにくくします。
蓋を閉めた時に
中の空気の圧力から蓋が押し戻されずに
スッキリ締まるように、
中の空気を抜けやすくするために、
突起の一部を1㎜削り取っています。
 

 
仕上げの磨きの作業においても、
職人の手仕事が発揮されています。
磨き加減によって手触りが全く違ってきます。
「角は付いているけど触った感じが柔らかい感じになるように、
 気を付けています。」と新門さんはおっしゃっていました。

「木ーボード」を発売してから、
それまで、重箱やお膳を造っていた時には
興味を示さなかった若者達が
毎年、この工房に入社するようになりました。
Hacoaで目指しているのは、
1500年の伝統の技術を未来に受け継ぐこと。
作るものが変わっても、
技術を継承していける仕事をやらないと続かない。
若い職人達に、伝統工芸の明日を託したい市橋さんの思いです。
 

 

Hacoa 福井本社

  • 住所:〒915-0824
         福井県鯖江市西袋町503
  • 電話:0778-65-3112
 
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