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石川県「山中漆器」

 
『奥の細道』にも登場する石川県加賀市の山中温泉
芭蕉はここに八泊九日という異例の長逗留をし、
「山中や 菊はたおらじ 湯のにほい」と詠んでいます。
 


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この山中の伝統工芸と言えば、
木地師の精緻な技が生きる「山中漆器」です。
 

石川県の漆器の3大産地として
「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」に並ぶ「木地の山中」として、
山中には古くから木地師(きじし)が多く、
職人の質・技術共に日本の頂点に君臨し、
日本には漆器の産地が30近くありますが、
日本4大漆器の中でも、生産額が産地全体の70%を占め日本一を誇ります。
 <日本四大漆器産地>
  • 紀州漆器
  • 会津漆器
  • 越前漆器
  • 山中漆器
 
 

歴史

山中漆器の始まりは、安土桃山時代の天正年間(1573~1592)。
越前の領主であった朝倉氏から「諸国山林伐採許可状」という、
原木伐採の自由を認めたお墨付きを与えられ、
良質の材料を求めて山から山へと移動していた木地師(きじし)
石川県山中温泉の上流にある真砂地区に移住し、
「轆轤挽き物」(ろくろひきもの)の技術が伝わったのが起源です。
その後、真砂から山中へ移って
温泉の土産として振る舞ったことから広まっていきました。
 
 
「木地師」とは、栃・ブナ・欅など広葉樹の木を伐採し、
轆轤(ろくろ)と呼ばれる特殊な工具を使って、
盆や椀などを作る職人達のことで、
地域によって「木地師・轆轤師・木地屋」と呼ばれました。
 
今から約1200年程前、第55代文徳天皇(西暦827~858年)の
第一皇子惟喬親王(これたかしんのう)が近江国小椋ノ庄
(現在は滋賀県東近江市)に居を構えていた頃、
法華経の巻物の「巻軸が回転する原理」から
轆轤による木地製作の技法を開発し、
その技術を家臣であった「小椋・大蔵」などの一族に伝授し、
轆轤製品の製作に当たらせたのが木地師始まりと言われています
この地の木地師・木地屋は当時、宮廷の奉仕に服していたので、
その後、長く諸国を自由に往来して
木地職渡世をする特権を与えられていました。
 

 
更に、江戸時代中頃(19世紀の前半)から
会津・京都・金沢から塗りや蒔絵の技術を導入することで、
木地だけでなく、茶道具として
「山中高蒔絵」(やまなかたかまきえ)が発展していきました。

そして江戸末期の文化年間に、木地師により考案された
千筋、荒筋など木地に様々な模様を施す「加飾挽き」や
光が透けるほど薄く仕上げる「薄挽き」などの
高度な木地「轆轤挽き物」技術は、山中漆器の大きな特徴となりました。
 

 
第2次世界大戦によって一時的に中断した時期がありましたが、
昭和30年代に入ると、山中町と加賀市に工場や生産団地が造られ、
合成樹脂や科学塗料を導入したことにより
多様なデザインと機能性に優れた低価格の商品が多量生産され、
昭和45(1970)年)以降に大きな発展を遂げています。
 
 
 
親しみのある大衆的な塗り物として支持される一方、
繊細な加飾挽きや優雅な蒔絵の美しさは、
その芸術的価値も認められ、
昭和50(1975)年、経済産業大臣指定の伝統的工芸品として認定。
昭和56(1981)年には会津塗を抜いて全国一の生産量となりました。
高齢化が進む中、輪島など全国の産地への木地提供も行っています。
 

平成6(1994)年には、川北良造さんが
木工芸の人としては5番目、
木地師としては初めて人間国宝に認定されました。
 


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山中漆器の特徴

加飾挽き

 

山中漆器の魅力の一つは、歪みが生じにくく堅牢な生地を使った、
とてもシンプルで、木目を生かす技法が使われている点にあります。
 

 
木地は、堅く狂いのない欅や栃、水目桜などが使われます。
それを「樅木取り」と呼ばれる山中漆器独特の手法で、
立木を自然な方向に木取りがされているため、
横方向に沿って木地を取り「横木取り」と比べ、
木質の狂いや歪みが少ないという特長があります。
 

 
そして、轆轤を回しながら
光が透けるほど薄く仕上げる「薄挽き」、
木地に刃物を当て模様を刻む「加飾挽き」が行われます。
「加飾挽き」は、
美観を与えるとともに滑りを防ぐ実用的な効果もあります。
 
 
木地師は自ら鍛冶をした道具で、
一人ひとりが持つ高度な技術で繊細な加飾を施していきます。
1本ずつ等幅に細い筋を引く「千筋」、
荒々しくランダムに筋を入れる「荒筋」、
針状のもので細く繊細な筋を入れる「毛筋」や「糸目」、
鉋の刃先が跳ねながら削る「トビ筋」、
稲穂の模様に削る「稲穂挽き」など、
その技法は数十種類以上にも及ぶそうです。
加飾されたものは、「拭き漆」(ふきうるし)という
琥珀色をした生漆を木地に塗っては拭き取る作業を繰り返し、
漆を塗った後も木目が見える器に仕上げていきます。
磨き上げられた漆器は、木目を際立たせ、手にしっとり馴染み、
使い込むほどに味わい深いものになります。
 

 
高蒔絵技術
蒔絵の部分が盛り上がっている「高蒔絵」も山中漆器の特徴です。
蒔絵は、漆を塗った器物に金や銀の粉、色粉を使って文様を描く技法です。
漆黒色や鮮やかな朱色の漆に描かれた繊細で立体感のある蒔絵は、
茶道具の他、アクセサリーや文具にも施されています。
 


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伝統技術を生かした「近代漆器への挑戦」
山中漆器は、戦後いち早く、合成樹脂や科学塗料を導入しました。
伝統の技術で培われた高度な塗装・蒔絵技術を生かしながら、
伝統的な木製漆器に留まらない、
現代の生活に合った様々な食器製品を生み出しています。
 


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