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イッピン「技を結集して新たなやきものを 岐阜県・美濃焼」

<番組紹介>
陶磁器なのに漆器のような輝きの皿、
モダンな艶消しのパステルカラーの器、
小さなタイルのピアスなど、伝統の技を駆使して、
時代と寄り添う美濃焼の新たな魅力に迫る。
岐阜県の東濃地方は、日本有数の陶磁器の産地。
かつては徳利やどんぶりなど、
地域ごとに得意とする器が異なり、
それぞれが専門に作っていた。
そこで培われた技術から、生み出された新しい器たち。
一つは、漆のような奥行きある輝きを放つお皿、
二つ目は、どんな世代のライフスタイルにも合う
艶消しパステルカラーの器、
そして三つめは、タイル作りを改良して生み出した
焼き物のアクセサリー。
個性豊かな美濃焼の魅力を味わう。
 
 
岐阜県の東濃地方は、
1300年以上の歴史をもつ陶磁器の産地で、
国内生産の陶磁器の約半数がここで作られています。
 
かつては徳利やどんぶりなど、地域毎に得意とする器が異なり、
それぞれが専門に作っていました。
そこで培われた技術から、
個性豊かな新しい美濃焼が生み出されています。
 
 

1.ぎやまん陶(「カネコ小兵製陶所」3代目・伊藤 克紀さん)


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美濃焼の生産地・土岐市下石町(おろしちょう)
大正10(1921)年に創業した「カネコ小兵製陶所」は、
令和3(2021)年に創業100周年を迎えた歴史ある窯元です。
 

 
美濃焼の歴史と伝統を大切にしながら、
やきものを通して、食卓に「小さなしあわせ」を届けようと
「ものづくり」をしてきました。
当初は主に神仏具を生産していましたが、
高度経済以降は、「燗徳利」の量産化を図り、
「日本一の徳利の窯元」となりました。
 

 
最盛期には年間160万本も売り上げた「燗徳利」も、
平成に入ると売り上げは急落したことから、
3代目の伊藤克紀さんは「燗徳利」に代わる新しい商品開発に取り組み、
平成20(2008)年には「ぎやまん陶」を
平成26(2014)年には「リンカ」を誕生させました。
現在、「ぎやまん陶」と「リンカ」は、日本国内だけではなく、
フランスやアメリカなど海外でも高く評価され、
カネコ小兵製陶所」を代表する商品となりました。
シャンパンの帝王ドン・ペリニヨン主催の晩餐会でも使用されています。
 
 
ぎやまん陶

 
日本の伝統的な菊の紋をかたどった「ぎやまん陶」は、
ガラスのような透明感と漆器を思わせる深みのある風合いを持つ
焼き物です。
 

伊藤さんが参考にした器は、
長野県で作られている「木曽漆器」でした。
漆の溜塗のような深みのある色を表現したいと考えたのです。
 

 
まずは釉薬を知り尽くした釉薬屋の福岡さんと一緒に
美濃焼の伝統的な釉薬「飴釉」の配合について試作を重ね、
2年半かけて、深みのある漆のような色合いを表現することに
成功しました。
 

 
漆の溜塗のような深みと光沢を引き出すために選んだ紋様は、
菊の花びらのような形に仕上げた「菊割」(きくわり)でした。
なだらかな起伏が連なるその花弁の形状は、
釉薬が器の窪みに程良く溜まるからです。
 

 
伊藤さんはこの地方で育まれた技を活かすことにしました。
形作るためには「鋳型」を使います。
この型を作り上げたのは奥村則義さんは、
型を作るために新たに道具を作り、型を完成させました。
 

 
独特の「飴色」を活かし、
繊細なラインを活かすために使う粘土も慎重に選びました。
岐阜県では、石英粒(珪砂)を含んだ灰色や褐色のカオリン質の
「蛙目粘土」(がいろめねんど)が産出します。
雨が降ると粘土の表面が洗われ、
石英粒が露出して蛙の目玉の様に見えることから
「蛙目粘土」と呼ばれています。
この粘土の粘り気と白さが漆のような深みのある一方で、
ガラスと間違えるほどの輝きを持つ焼き物を生むのです。

成型を担当するのは林幸司さんです。
粘土を撹拌し滑らかになった泥を、鋳型に流し込んだら、
圧力をかけて隅々まで泥を押し込みます。
そして約30分後、菊割の花びらが際立つ皿が現れました。
 
 
そして釉薬づけです。
独自の施釉法も開発しました。
専用のハサミで器を持ち、
手首のスナップを利かせ、ふわりと返します。
わずか数秒の間に、均一に釉薬をつけていきます。
 

 
漆のような深みのある色に焼き上げたら、完成です。
なだらかな起伏が連なるその花弁の形状により、
釉薬が器の窪みに程良く溜まり、
まるでガラスのような驚くほどの透明感を持つ
焼き物が出来ました。
 
焼き上がった時の、その特別な光を放つ存在感と美しさ故に、
伊藤さんは、ガラスを意味する古い言葉を当てて、
ぎやまん陶」と名付けました。
 

 
ガラスと間違えるほどの輝きを持つ「ぎやまん陶」は、
料理を盛った時に料理が一層映えます。
また、1300℃の還元焼成で焼き上げられているため、
温める程度の電子レンジや食器洗い乾燥機も使えます。
 
現在、番組でも紹介されていた「漆ブラウン」に加えて、
「墨ブラック」「茄子紺ブルー」「利休グリーン」の4色があります。
 
<漆ブラウン>

 漆器を思わせる深みのある風合いを
 やきもので表現したものです。
 
<墨ブラック>

  まるで漆の溜め塗りのような奥行きと、
 ガラスのように繊細な透明感が共存する、
 滑らかな光沢が持ち味があります。
 濃淡で表現する、日本人の美意識が生んだ、
 墨色の世界。
 無駄をそぎ落とした水墨画のような風合いは、
 禅の心にも通じます。
 
<茄子紺ブルー>

 日本古来の藍染の色をやきもので表現。
 
<利休グリーン>

 美濃焼の伝統である織部釉を
 現代風にアレンジしたもの。
 
 
リンカ

 
リンカ」は、平成26(2014)年に発売された
大振りの花びらのような形と土物の温もりのある
うつわのシリーズです。
 
色も形もそれほど奇抜ではないのに、温かく素朴な印象が、
普段の何気ない日常に溶け込み、毎日の食卓を引き立ててくれます。
また食洗機も電子レンジも使えるという使い勝手の良さが喜ばれ、
世界中に愛用者を持つ「カネコ小兵製陶所」の主力商品となりました。
 

 
リンカ」は「軽くても薄っぺらに見えない食器」を目指して
開発されました。
土ものは全体的に分厚くなるため、どうしても重くなってしまいます。
かと言って軽くしようと縁を薄くすると欠けやすくなってしまいます。
「ぎやまん陶」の時と同様に、型職人と釉薬職人の粘り強い情熱で、
何度も型を修正しては焼成し、また調整と試作を繰り返して生まれました。
 
リンカ」は縁は厚めですが、
薄くて軽くて欠けにくく丈夫なののが特徴の器です。
 

 
「白練」、所々に薄茶が施された「空練」の2色で始まった
リンカ」も、
平成29(2017)年には「黒練」、
平成30(2018)年には「桃練」が追加されました。

 
 
 
 

2.SAKUZAN(「作山窯」3代目・髙井宣泰さん)

 
安土桃山から江戸時代の始めにかけて、
今も「美濃焼」を代表する「志野」や「織部」など、
数々の独創的な器が生み出されました。
 
その後は、陶器だけでなく磁器も手掛けるようになるなど、
常に新しい技への挑戦が「美濃焼」の歴史を築いてきました。
 
生産量が増えるとともに、分業制が発達。
また地域毎に茶碗やお猪口など、それぞれ専門に作るようになりました。
駄知町では「丼」が作られ、
多い時は約130の窯元があったそうです。
 

 
岐阜県土岐市駄知(だち)の山作陶器でも「丼」を作ってきましたが、
3代目の髙井宣泰さんは大学でデザインを学び就職した後、
祖父・父に続いて、工房「作山窯(さくざんがま)を構えました。
最初は業務用を中心にやっていましたが、
徐々にOEMや百貨店での展開を通して一般向けもやるようになり、
現在は、100種類以上の釉薬と14種類の土、3通りの焼き方を組み合わせて、
自らの個性を磨き上げた多彩な作品を送り出しています。
 

 
コンセプトは「料理のための美しい器」。
暮らしに馴染む佇まいの美しさ、
使う度に実感する機能美、器にとっての美しさを求め、
独自の視点を生かした作品を次々と発表しています。
 

 
料理との相性が良くないと避けられることが多かったマット釉を使い、
洋風なライフスタイルにも合うような器を手掛けています。
 

 
「作山窯」では、直営店「SAKUZAN VILLAGE」を
令和元(2019)年11月にオープンしました。
こちらでは、様々なうつわを直接に手に取って、
その手触りや釉薬の風合いなどを感じることが出来ます。
 

 

SAKUZAN VILLAGE

 
 
 

3.やきものアクセサリー(七窯社・3代目 鈴木耕二さん)


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多治見市は1300年もの焼き物の歴史があります。
安土桃山時代には、
茶器として発展した「美濃焼」の産地の一つとなりました。
その技術を持って大正時代にタイル産業が始まり、
現在もモザイクタイルの生産量は日本一です。
タイルの需要は減りましたが、
今、懐かしさのあるタイルが見直されています。
 
七窯社 鈴木タイル店」は、タイルの町、岐阜県多治見市で、
昭和24(1949)年にタイルの商社として創業し、
昭和63(1988)年からは「役物やくものタイル」の生素地を主として
製造しています。
役物(やくもの)とは、特殊な役割を持ったタイルのことで、
中でも「七窯社」では建物のコーナー部分に使用する
「曲がったタイル」の生地の製造に取り組みました。
 
 
そんな中、「七窯社」の3代目・鈴木耕二さんは、
タイルの役割としてその装飾性に着目し、
タイルの新しい可能性を求めて、
平成25(2013)年に、
タイルブランド「七窯社(ななようしゃ)を立ち上げました。

これまで捨てられていたものの美しさや可能性を見直し、
アップサイクルするタイルジュエリーのブランドです。
タイルを作る過程で残った使い切れなかった
「釉薬」や「規格外品」はこれまで廃棄されてきました。
しかし使い切れずに集められた「釉薬」は、
美しく複雑な色を生み出すことが出来ます。
また「規格外品」には、決められた色や形に収まらない魅力があります。
「これらを廃棄するのではなく、その個性に光をあてたい」
そんな思いから、「七窯社」の3代目・鈴木さんは、
陶芸作家の駒井香文さんと
ジュエリー作家で一級貴金属装身具技能士の小川夏都代さんを迎えて、
Re.Juile [リジュイル] を誕生させました。

仏語でジュエリーを意味する「bijoux(ビジュー)」と
タイルを意味する 「tuile(テュイル)」に、
繰り返しや再びを意味する「re(リ)」を付け加えた造語です。
 
美しくも温かみのある「やきものアクセサリー」です。
材料の土は丸い粒状に加工し、
素焼きした後、手書きで絵付けをします。
一個一個、手作業で作っているので、
一つとして同じものはなく、それぞれに味わいが出ています。
特に、色へのこだわりを大切にしていて、
釉薬は全て原料から調合して作られています。
 

 
令和元(2019)年11月には、
体験工房「七窯社 鈴木タイル店」がOPEN。
アクセサリー販売、ワークショップ、タイルの工場見学が出来ます。 
 

七窯社

   
  • 住所:〒507-0018
       岐阜県多治見市高田町 106 8   
  • 電話:0572-22-0388
 
<参考>
 

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