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イッピン「木々が織りなす鮮やかなモザイク模様 神奈川・小田原箱根の寄木細工」

<番組紹介>
小田原や箱根で江戸時代から作られてきた
寄せ木細工。
最近では伝統的な技術を駆使し、
皿や茶わん、ボタンなど、
モダンで洗練された製品が生まれ、
人気を集めている。
寄せ木とは、
数種類の色が異なる木を組み合せ、
さまざまな幾何学模様を作り出す技法。
パズルのように文様を組み合わせる
伝統的な超絶技巧や、
木を彫り込むことで
大胆な模様を描く手法などがある。
木の性質を知り尽くした職人の世界を、
タレントのユージが探る。
 
<初回放送日:平成25(2013)年3月12日 >
 
 

箱根寄木細工

箱根寄木細工とは
「箱根寄木細工」は、箱根山中に自生する
ニガキ、マユミ、ミズキなどから挽いた
有色天然木材が持つ異なった材色や木目を
生かしながら寄せ集め、
「六角麻の葉」「市松」「からみ桝」「菱青海波」
など、精緻な幾何学文様を作り出し、
これを特殊な大鉋で薄く削り、貼り付け装飾し
製品にする手作りの木工芸です。
 
海外ではこのような「寄木細工」は
あまり作られていないため、
日本独自の文化と言えるでしょう。
現在、日本では箱根・小田原地方でのみ
生産されています。
 
起源
箱根の山は、元々、材木の調達地でした。
そしてその麓の小田原では、平安時代より
豊富な木材を使った木工が栄えました。
 
「箱根細工」は、江戸時代末期に
箱根畑宿の石川仁兵衛が創作したといわれ、
温泉地や街道の茶屋で売られるようになると、
だんだんと広まっていきました。
 
古くからの文献にも数多く登場し、
文政9(1826)年に上梓された
シーボルトの『江戸参府紀行』には、
寄木細工が高級品の家具や調度品に
使われていたことが記されています。
 
また天保年間(1830~40年)の
安藤広重の浮世絵
『箱根屋 外茶番屋膝栗毛』にも
描かれています。
 
昭和59(1984)年に国の伝統工芸品として
認定されました。
 

「露木木工所」
4代目の露木清高さん


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平成24(2012)年12月28日、箱根湯本温泉に
オープンした「星野リゾート 界 箱根」には、
ロビーに数多くの寄木細工が並べられ、
部屋の床の間にも寄木細工の掛け軸が
かけられています。
 

www.hoshinoresorts.com

 
ホテルにある寄木細工を手掛けたのは、
小田原市にある「露木木工所」の
4代目・露木清高さんです。
 
 
露木木工所」は、大正15(1926)年創業した、
「箱根寄木細工」の木工所です。
創業者・露木清吉は、箱根寄木細工の創始者・
石川仁兵衛の孫に師事した後、独立。
4代目・露木清高さんは、
伝統的な寄木細工をベースに、
新時代のモダンで斬新な器まで
幅広く制作しています。
 
 
材料となる木は、板状にして寝かせて保管。
場所や木目によって木の表情が違うため、
どういうところを使ったらいいのかを選んで
作品に使用しているそうです。
「抹茶茶碗」を作る工程を拝見しました。
 
デザインを決めたら、
木材を使いやすい大きさに切り出します。
厚みはデザインに影響するため、
何度も計測しながら微妙な調整を加えます。
この時点で、露木さんの頭の中には
完成予想図画が出来上がっているそう。
 
組み上げた木材を、
挽き物職人の大川さんの元に持ち込み、
具体的な削り方について指示を出します。
ほんの少しでもズレると、
イメージ通りにならなくなるため、
大川さんは見事、露木さんのイメージ通りに
削り出しました。
寄木ギャラリーツユキ
  • 住所:〒250-0021
    神奈川県小田原市早川2-2-15
  • 電話  :0465-22-5995
  • 営業時間:9:00〜17:00
  • 定休日 :日曜・祭日・第2土曜日
 
 

寄木細工の幾何学模様の秘密
(「浜松屋」7代目・石川 一郎さん)


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寄木細工の幾何学模様の秘密を探るため、
「浜松屋」の7代目・石川 一郎さんに
複雑な文様の作り方を工程を見学させて
いただきました。
 
石川さんは、「箱根寄木細工」の創始者・
石川仁兵衛の血筋を引ぐ七代目で、
「箱根寄木細工」の伝統工芸士の一人です。
 
一片一片の木片を作るためには、
木を切り出す角度や寸法の正確性、接着技術、
そしてそれらを生み出す工具の製作に至るまで
長い年月の経験と熟練が必要です。
 
切り出した部材は
(かんな)をかけて表面を滑らかにし、
しっかりと張り合わせ、
同じようにして他の文様と組上げて、
模様を作り出した
「種板」(たねいた)と呼ばれる
全てのベースとなる板が完成します。
 
「箱根寄木細工」の技法には、
この「種板」(たねいた)を特殊な鉋(かんな)
0.15~0.2㎜シート状に薄く削った「ヅク」を
木製品の表面に貼る「ヅク貼り」と、
「種板」をそのままろくろなどで削り出して
作品にする「ムク作り」の二つがあります。
 
ヅク貼り


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「ヅク貼り」は、「種板」を削るのが
職人の腕の見せ所です。
石川さんの工房には、
巨大な種板を挽く時に利用する
「せんがんな」という巨大な鉋もあります。
 
石川さんは、寄木細工の修行には、
鉋を覚えるだけで5年掛かり、
木の目を見たりで10年くらいは掛かってしまう
とおっしゃいます。
 
ムク作り


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「ムク作り」は、寄木の塊から
そのままお皿などを削り出していく方法で、
戦後の接着剤の進化とともに実用化された
そうです。
「ヅク貼り」のように量産は出来ませんが、
削る角度によって模様が大きく変わるため、
様々な表情を見ることが出来ます。
 
 

「本間木工所」「本間寄木美術館」
本間昇さん


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箱根町立郷土資料館」に所蔵されている
「観音開扉洋風厨子」は、江戸時代末期、
日本に来たオランダ人がキリスト像を安置する
ために作らせたものと言われています。
ここに施されている文様の多くは、今では
技術が途絶えてしまったそうです。
 
「この複製が私の人生を変えた」と
言わしめるくらいの衝撃を受けた
「本間木工所」の本間昇さんが
3年掛かりで複製に成功させました。
 
複製製作に取り組むということは、
技術保存事業にも取り組むということ。
本間さんは複製製作過程で、
多くの江戸時代からの優れた寄木細工に
触れることが出来ました。
中には殿様が使った「寄木細工文台硯」もあり、
そこにははっきりと「寄木細工」の文字が
記してありました。
 
 
複製事業は、その後の自らのデザインに
多大なる影響を及ぼしたと本間さんは
おっしゃいます。
 
その一つが「古代裂寄木模様」という作品。
桃山時代の古布にインスパイアされ、
「古代裂」(こだいきれ)と名付けたものです。
 
本間さんはまた、
全国から古今の「寄木細工」を収集し、
平成6(1994)年に「本間美術館」を
オープンさせました。
 

www.yoseki-museum.com

 

雑木囃子


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ロンドンの高級セレクトショップでは、
寄木細工が人気です。
現地では1万円以上もする
寄木細工のからくり箱が贈り物として
高い人気となっています。
この箱は新しい試みに
次々とチャレンジしている
露木清高さんが作ったものです。
 
露木さんは地元の有志6名とともに、
歴史と伝統を誇るこの寄木細工に
新風を吹き込むため、
雑木囃子」というプロジェクトチームを結成。
プロジェクトの監修に、
プロダクトデザイナーの喜多俊之氏を迎え、
デザイン性に優れ、より日常生活に役立つ
世界に通用する新しい寄木細工を模索して
います。
 
プロダクトデザイナーの
喜多俊之(きた としゆき)さんから、
師匠の踏襲ではなく、
「誰のために何で作るのか?」と
使う人や使い道を考えた作品作りをするように
アドバイスされてから、
雑木囃子」のメンバーの作品は
日常使う事を意識した作品作りに
注力するようになりました。
 

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