<番組紹介>
奈良県には吉野杉という杉材がある。
中には樹齢200年を超えるものもあるという、
この杉材を使って、精巧な椀や、照明器具を作る
木工職人たちの仕事ぶりを紹介する。
奈良県には、吉野杉という杉材がある。
中には樹齢200年を超えるものも。
しかし、林業不振が続く中、従来の建材用だけでなく、
木工用に杉材を使おうという職人が出てきた。
一人は、200年以上の杉を使い、
縁の幅3ミリという極薄の椀を作る。
削り出す際、神経を集中させなければ、割れてしまう
可能性もある。
また、照明器具を作る職人は、「透かし彫り」の技法を
使う。
ち密な木目の板であるほど、精巧に彫りこむことが
できる。
<初回放送日:令和4(2022)年3月25日>
奈良県の南東部に位置する奈良県吉野郡川上村は、
「日本の三大人工美林」と称される「吉野杉」(よしのすぎ)の
500年の歴史を誇る吉野林業の中心地です。
-天然の三大美林-
|
-人工の三大美林-
|
吉野林業地帯は、
海抜300~800m、平均気温14℃、年間降水量2500㎜、
積雪は年数回で50cm以内と、
「吉野杉」の生育に大変適した環境です。
栄養分に優れた土壌は、保水性、透水性が極めて高く、
長い年月をかけて人の手で大切に守られながら育まれた、
まさに最高品質と名高い銘木です。
1.吉野杉の茶碗 (「工房 アップルジャック」小林清孝さん)
小林清孝さんは川上村の出身で元自衛隊員。
木工職人への道を目指して村に戻り、
川上村木工センターの専従職員として
轆轤(ろくろ)技術や木工技術を習得した後、
独立して「工房 アップルジャック」を設立しました。
小林清孝さんは、
この吉野杉や、吉野桧、桜など地元の木材を使って
木の表情をそのままに活かした、
シンプルにデザインされた器を生み出し続けています。
工房には、様々な杢目が浮かぶ「吉野杉」や「吉野檜」が
積まれています。
こうした吉野材の特徴を生かし、
轆轤(ろくろ)で出来る限り薄く軽くなるように仕上げ、
様々な種類のやすりを使いながら滑らかに整えた製品は、
肌に馴染むようなやさしさがあります。
吉野杉は油分が多く、
年月が経つと深みのある飴色に変わっていきます。
使えば使うほどに、色艶が増していくのです。
使う人の時間に寄り添いながら、
味わい深く変化していく様子を楽しむ。
これも、木工品ならではの魅力だと言えます。
- 住所:〒639-3541
奈良県吉野郡川上村東川1595 - 電話:090-5128-2151
2.吉野杉透かし彫り(中瀬悦二さん)
奈良県中部、吉野川右岸に位置する大淀町で、
吉野杉を使った照明を創作している
灯りアーティストの中瀬さん。
中瀬さんは、
ガラス工芸に多用される「サンドブラスト技法」というで、
樹齢100年前後の吉野杉の無垢材の貴重な柾目板の
年輪の硬い部分である「冬目」(ふゆめ)を残し、
軟らかい「夏目」(なつめ)をゆっくり時間をかけて彫り抜いて、
「透かし彫り」の照明を作っています。
「冬目」(ふゆめ)
木の成長が緩やかで、
夏から冬にかけて成長する部分。
厚さが薄く、硬くて色が濃い。
「夏目」(なつめ)
木の成長が活発な春から夏にかけて
成長する部分。
厚みがあり、やわらかく色が薄い。
砂(sand)を吹き付け(blast)て
金属やガラスを研磨する方法です。
1870年代に米国でサビ落としの方法として
開発された技法で、
非常に強い風に飛ばされた砂が
窓ガラスを削ってしまうことから発見されたと
言われています。
始めは船や金属の塗装前の研磨などに
使われていましたが、
その後は工芸用にも用いられるようになり、
近年は、ガラス工芸技法のひとつとして
確立しました。
コンプレッサーで圧搾した空気と砂を
ブサスト機でガラスなどに吹きつけて削ります。
中瀬さんの作った作品は、昼間はインテリアとして、
吉野スギの穏やかな表情と香りを楽しむことが出来ます。
一方夜は、幻想的な暖かな光とともに癒しの空間を演出してくれます。
Ch Style
- 住所:〒638-0852
奈良県吉野郡大淀町持尾305 - 電話:090-3997-0722