<番組紹介>
ブナの木でできた優美なイス。
山桜の樹皮を使った下駄。
そして非常に硬い木で作ったクシは、波の形だ。
さまざまな木材の性質を知り尽くした、
秋田の職人たちの手仕事を紹介。
秋田県は、日本でも有数の森林の豊かな県だ。
木工職人たちは、様々な種類の木の性質を知り尽くし、
それを生かしたもの作りに取り組んできた。
ブナの木がよく曲がることを利用した、
優美な背もたれのイス。
美しい模様と艶を持つ山桜の樹皮で作った下駄。
樹皮を削り、磨きあげる技は、伝統のかば細工だ。
そして、波の形にカーブしたクシ。
実は、きわめてかたい木を使っており、
加工にも金属加工用の機械を使うそれぞれの技に迫る。
1.曲木家具(秋田木工)
秋田では豊富な森林資源を使った木工業が栄えてきました。
「秋田木工」は、
日本で唯一の曲木家具専門ブランドです。
明治43(1910)年に、曲木に適したブナやナラが豊富な、
秋田県の湯沢市に設立されました。
「木が木で立っていたときよりも立派に美しく」という信念の下、
熟練した職人の丹念な手作業で、「曲木家具」を生み出しています。
「曲木」とは、その名の通り、
木材を高温で蒸して柔らかくしてから、
鉄製の治具にはめ込んで固定し乾燥させる方法です。
蒸して柔らかくした木材の外側に鉄板を当て、
鉄板の更に外側にある雌治具から鉄板の方へ圧力をかけ、
鉄板と木材を内側の治具の型に沿わせていきます。
それによって、曲げの中心軸は外側(引っ張り側)に移行し、
応力を内側に集めることで
木材を破損することなく曲げることが出来るのです。
曲木の技術を発明したのは、
ドイツ人のミヒャエル・トーネット(1796年〜1871年)です。
この技術により、
これまでの椅子とは一線を画す椅子が生まれました。
これまでの椅子とは一線を画す椅子が生まれました。
曲木椅子には、次の4つの特徴があります。
- 少ない部材でシンプルに仕上げられているため軽い。
- 切り出した木材を組むのとは異なり、
繊維が切れていないため、細いパーツでも丈夫。 - アールの組み合わせによって、美しい形が可能に。
また、曲木による体に沿った背のラインが生まれ、
機能面でも向上。 - 曲木に適した木材はブナが主。
ブナ材は価格が比較的安いため、
コストを抑えることが出来る。
トーネットは曲木椅子を数多く生み出しました。
特に1859年に発表された「NO.14」は歴史に残る名作となり、
現在までに約2億脚製造されたと言われています。
そのトーネットの曲木技術が日本に初めて伝わったのは、
明治34(1901)年のことです。
東北地方の各地や、岐阜県の飛騨地域などに
曲木細工を生かした工業製品の産地が形成され、
明治43(1910)年に「秋田木工」が創業しました。
平成18(2006)年に大塚家具傘下に入りましたが、
今も、日本を代表する曲木家具を続け続ける
日本唯一の専門工房です。
「秋田木工」では、名立たるデザイナーと
名作とも呼べる数々の作品を共に作り上げてきました。
最近では、デザイナー・五十嵐久枝による
2020年度グッドデザイン賞を受賞しています。
「MAGEKKO」は、 令和元(2019)年に
日本の伝統の技術と国内産の自然材を活かした家具を通じて、
日本のものづくりの魅力を知っていただきたいとの想いを込めて
「AGITA」シリーズ第1弾として発売されたものです。
秋田の方言をもとに名付けられた、
曲木の技を存分に味わえるシリーズを象徴する椅子です。
その秋田木工、今年、令和3年11月に創業110周年を迎えます。
10月30日(金)~11月1日(日)の期間、
「秋の大特売会」が開催されるそうです。
- 住所:〒012-0862
秋田県湯沢市関口川前117 - 電話:0183-73-0123
2.角館 伝四郎「樺下駄」(伝統工芸士・高橋正美さん)
山桜の樹皮は硬く、目が詰まっているため、
工芸品に使われてきました。
「角館 伝四郎」は、嘉永四(1851)年)の創業以来、
七代に渡って高品質な樺細工を作り続けている、
藤木伝四郎商店のブランドです。
番組では、伝統工芸士の高橋正美さんが
樺下駄を製作する工程が紹介されました。
山桜の樹皮は数年かけて乾燥され、
美しい模様が広がる赤褐色の層が見えるまで
包丁で削っていきます。
これを下駄に張り合わせ、
熱した小手で接着剤の膠を丁寧に伸ばしていきます。
低過ぎると膠が溶けず、熱過ぎると焦げ付いてしまうので
微妙な温度加減が要求されます。
磨きの最終段階では、
無数の凹凸があって僅かな傷も滑らかにしてくれる
椋の葉を使います。
最後に動物性の油脂で表面を磨けば、樺下駄は完成です。
- 住所:〒014-0315
秋田県仙北市角館町下新町45番地 - 電話:0187-54-1151
3.斧折樺の櫛(AKITAアートフォルム・橋野浩之さん)
秋田県鹿鹿角市十和田大湯には、
「斧折樺」(おのおれかんば)という、
その名の通り斧が折れてしまうほどの堅さで、
水に沈むほど比重がある落葉高木を使った
木工品の制作を行っている工房があります。
平成3(1991)年に設立された「AKITAアートフォルム」です。
工芸家・橋野浩行さんは、
「斧折樺」(おのおれかんば)と呼ばれる貴重な材料を使った
靴べらセットやひねり髪すきなど、
オリジナリティー溢れる商品作りを行っています。
斧折樺は過酷な環境で生きるため、
年に0.2㎜しか太くならないという日本の樹木です。
現在ではほとんど採れないため、
大変希少価値の高い木材になってしまいました。
「斧折樺」は、日本の木の中でも屈指の硬さ。
普通の木工用の刃では歯が立ちません。
そこで橋野さんは、
金属加工用の刃を頑強にしたものを使っています。
削った後、残った水分が木から抜けていくと、
歯が曲がることがあるため、
3年の月日をかけて乾燥させなければなりません。
そして、絶妙な曲線を描くように慎重を重ねて削っていき、
椿油に数週間漬け込めば、完成です。
橋野さんの、使う人の気持ちになって考え抜かれたデザインは、
使いやすさだけではなく、
その滑らかさと木のぬくもりを確かめたくなるようなフォルム。
そして、艶やかな色合いになっています。
更に、経年変化による楽しみもあります。
- 住所:〒018-5421
秋田県鹿角市十和田大湯扇ノ平49−3 - 電話:0186-37-3323