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美の壺「涼を楽しむ 夏の甘味」 <File479>

わらび餅、みつ豆、ところてん、水ようかん…
安らぎと清涼感をもたらす夏の甘味を紹介!
 
▽京都・貴船の川床でいただく「わらび餅」▽食べる宝石!
 創業130年以上の和菓子店が手がける輝く「ゼリー」
▽目にも涼しい、氷のような寒天キューブの「みつ豆」
▽黒蜜派?酢じょうゆ派?富士山の湧き水が生み出す「ところてん」
▽向田邦子が、BGMから照明までこだわる「水ようかん」。
 究極の味わい方とは?!
 
 
夏の暑い盛りに ホッと ひと息。
冷たくて 甘~い甘味が至福の時をもたらしてくれます。
夏の甘味は 見た目も涼やか。
色や形 香りや食感など、古くから涼しさを呼ぶ工夫がされてきました。
更にあの人が愛した 水羊羹も…。
今回は涼味満点! 夏の甘味を堪能します。

 

美の壺1.伝統を涼やかに演出

 

京都・貴船の川床でいただく「わらび餅」(貴船川床 兵衛)

 
古より「京の奥座敷」と呼ばれてきた京都・貴船。
夏は、街中より5度から10度も涼しい別天地です。
 
ここの夏の風物詩は「川床」です。
都の喧騒を忘れて川床で頂くのは、甘味。
「貴船川床 兵衛」さんでは「わらび餅」が人気です。
 

hyoue.com

 
空気を入れるように混ぜて気泡を作り
餅の中に滝のしぶきを表現したり、
水に浮かべて涼やかな川の流れを演出したり。
 
最後に、新鮮な木通(あけび)の新芽をあしらいました。
水からすくって、お好みで黒蜜やきな粉をつけて頂きます。
 
  • 住所:〒601-1112
       京都府京都市左京区鞍馬貴船町101番地   
  • 電話:075-741-3066
 
 

京都 食べる宝石!輝く「ゼリー」(京都 大極殿本舗六角店 栖園)

 
明治18年創業の和菓子店、大極殿本舗 六角店 「栖園(せいえん)」。
ここにも夏ならではの甘味があります。
 
江戸時代の町家を改築した店の一角に、喫茶室があります。
坪庭を眺めながら頂く夏の甘味は、「寒天のゼリー」です。
 
「寒天のゼリー」は、12か月、毎月違うゼリーが登場します。
5月は新茶の出回る季節は「抹茶」、 あずきの蜜漬けが添えられます。
6月は「梅酒蜜」。
8月は暑気払いのため、冷やしあめにショウガがトッピングされます。
まさに「食べる宝石」です。
中でも涼しげなのは、
7月のミントのゼリーにミントのシロップをかけたもの。
15年前からの夏の人気メニューです。
ミントリキュールに、和菓子で使われるハッカを加えているので、
爽快な味と香りがします。
 
  • 住所:〒604-8117
       京都府京都市中京区堀之上町120 
  • 電話:075-221-3311
 
 

美の壺2.目にも涼しく舌にも涼しくる

 

東京・浅草 みつ豆の起源(東京浅草「舟和)

 
東京浅草にある老舗和菓子店の甘味処「舟和」。
明治36年に日本で初めて 「みつ豆」を売り出しました。
「みつ豆」は「みつ豆ホール」と命名した喫茶店で提供されると
大人気になり、その後、全国に広まりました。
 

 
「みつ豆」は、
「夏に、お菓子で涼しさを感じて欲しい」と考えられました。
和菓子の材料として身近だった寒天を
サイコロ状に切ったところ、まるで氷のようだと評判に。
トッピングは、あんずと赤えんどう豆、そして求肥。
当時としては、とっても華やかで、
洋風を意識した銀色の器とスプーンで振舞われました。
 

 
みつ豆のトッピングは時代と共に変化して
よりカラフルな現在のスタイルになりましたが、
昔も今も、透き通った氷に見立てた寒天が清涼感を醸し出します。
 
  • 住所:〒111-0032
      東京都台東区浅草1丁目22−10 
 
 

静岡富士山の湧き水が生み出す「ところてん」

つるんとした喉越しが人気の「ところてん」は、
奈良時代にChinaから伝わったと言われています。
江戸時代には、天秤棒を担いだ 「ところてん売り」が登場するほど
人気になりました。
 

 
静岡県西伊豆町は、ところてんの原料となる「天草」の一大産地。
古くから質の良い天草が採れることで知られています。
5月から6月は天草漁の最盛期です。
採った天草はすぐに天日に干されます。
日光に晒し、水洗いを繰り返すことで、
色素が抜けて、透き通った「ところてん」になります。
 

 
もう一つ ところてんに欠かせないのは「水」です。
富士山の雪解け水が湧き出す柿田川は、
透明度が高いことで知られています。
 

 
明治2年創業「栗原商店」は
「伊豆河童のところてん」を製造・販売をする企業です。
「伊豆河童のところてん」は自社の工場で作られています。
ところてん作りには、富士山の雪解け水が湧き出る、
柿田川の湧き水が使われています。
 
繰り返し干して白っぽくなった天草に、
一度だけ干した赤い天草をおよそ2割ブレンドするのは、
美味しさと美しさを追求した結果。
 

 
栗原商店では、棒状の寒天や粉の寒天は使いません。
天草そのものから作ることにこだわっています。
およそ5時間、様子を見ながらじっくり煮て
「寒天質」という固まる成分を引き出します。
煮て濾した液を型に流し込み、一晩、自然冷却します。
これをおよそ30年前から伝わる、木製の「てんつき」で切り出すと、
程良い弾力で、角の立った「ところてん」の完成です。
 

 
つるんとコシのある「ところてん」は、
自分で突くのも楽しみの一つ。
磯の香りと名水が生み出す味わいです。
五感で楽しむ、夏の甘味です。
 
 

夏の季語(夏井いつき先生)

 
「夏の甘味」には、季語になっているものも多いそうです。
「みつ豆」「あんみつ」「ゼリー」「葛切り」「ところてん」・・・、
全部、夏の季語ですね。
 
季語として覚えておくと、
ちょっと洒落ているというか素敵な季語があります。
「氷菓」。
 

 
氷の菓子って書いて「氷菓」。
「かき氷」ではありません。
「かき氷」は「かき氷」で季語になっています。
「氷菓」は、アイスクリーム系のものを全部ひっくるめたものです。
 
氷菓互ひに 中年の恋 ほろにがき 秋元不死男
少女らへ 満艦飾の 氷菓くる   平松美知子
  

 
 

美の壺3.向き合い、語り合う

 

向田邦子さんが愛した東京・青山「菊家」の水羊羹(妹・和子さん)

 
脚本家で直木賞作家の向田邦子さんは、
自ら「水羊羹評論家」と名乗るほど「水羊羹」を愛し、
エッセーにも記しています。
向田さんのお気に入りは、自宅近くの和菓子屋「菊家」の水羊羹です。
仕事の合間に訪れては、おかみと話すのが楽しみでした。
 
鹿児島市城山町鶴丸城跡にある「かごしま近代文学館」には、
向田邦子さんの資料や愛用の品々とともに、
向田さんが愛用されていた水羊羹に使っていた器が収められています。
直径15cm程のぽってりとした皿です。
 

 

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