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イッピン「水晶に命吹き込む神の手 山梨・ジュエリーⅠ」

<番組紹介>
今回のイッピンは、まばゆい輝きを放つ
「山梨のジュエリー」。
山梨県は、国内で作られる
およそ3分の1のジュエリーを生産する
一大産地だ。
リサーチに向かったのは、
女優・田中美里さん。
世界でも最高の技術を持つといわれる、
水晶から180の面を削り出す職人や、
石から自由自在に作品を彫り出す
究極のワザを持つ職人と出会っていく。
「神の手」が生み出すと賞賛される、
山梨のジュエリーの魅力を、
とことんお届けする。
 
<初回放送日:平成25(2013)年2月19日>
 
 
 
今回は180もの面を持つ水晶「桔梗カット」。長い間地下深くで眠っていた水晶を、
指先の微妙な感覚だけで精巧にカットする
宝石研磨技術。
手作業によって複雑な形と極上の輝きを
引き出す職人達が山梨にはいます。
 

「桔梗カット」
(「シミズ貴石」清水幸雄さん)


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平成25(2013)年年1月に開かれた
「国際宝飾展 IJT2013」には、
世界30カ国の宝飾メーカーが集まりました。
海外からやってきたバイヤー達が注目したのが
山梨県で作られたジュエリーの数々です。
宝石大国のインドのバイヤーも
「品質が良い、形もデザインも良い」と
絶賛していました。
中でも目利き達を唸らせたのは、
超絶技巧180面カットを施した
「桔梗カット」が用いられた水晶でした。

  - さくら イン カット ー
 
180面カットの技を探るべく、
山梨県甲府市にある「シミズ貴石」の
黄綬褒章受章の一級研磨士・清水幸雄さんを
訪れ、超絶技巧の180面をカットする現場を
見せていただきました。

  - クローバー イン カット -
 
清水さんのもとには、
様々な原石が集まって来ていました。
清水幸雄さんは、道具などは一切使わず、
原石を直接削っていきます。
 

  - カメリア イン カット -
 
まず、 正五角形12枚で囲んだ
正十二面体をベースに、
それぞれの正五角形の中心に向かって
稜線のある五面のファセットカットを
施します。
 
全ての方向から、細かいバランスを見ながら
作成していく必要があるため、
機械研磨では作ることは出来ません。
石を直接手に持ち、カットを施していきます。
 

  - スター イン カット -
 
更にカットを増やし続け、
合計180面を有する多面体に
仕上げていきました。
 
シミズ貴石
  • 住所:〒400-0042
    山梨県甲府市高畑1丁目13-18
  • 電話:055-228-1180
 
 

山梨の推奨採掘の歴史


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約1000年前、美しい眺めで知られる
「御嶽昇仙峡」の奥地から
「水晶の原石」が発見されたことから
甲州の水晶産業の歴史は始まりました。
 
 
かつて山梨の山々では大量の水晶が採掘され、
明治時代には一大産業に発展し、輸出もされていました。
現在では、資源を保護するために
地元での採掘は行われなくなりましたが、
加工技術はしっかりと受け継がれています。
 
御岳昇仙峡・金峰山
 
県北部、甲府市近郊の金峰山一帯には、
古くは武田信玄の治世、
金山に端を発する幾つもの鉱山が存在し、
明治に入り近代化が行われた後には、
工学ガラスなどの資源として
「水晶」が盛んに採掘されました。
 
金峰山と深い関わりを持つ金櫻神社かなざくらじんじゃには、
金峰山で採掘された「水晶」を
京都の職人が削って作ったとされる
「火の玉、水の玉」があります。
水晶を加工する高度な技術は、
京都の職人から金櫻神社の職人へ
伝えられたと言われています。
 
乙女鉱山での水晶産出
「乙女鉱山」は
明治初頭から昭和50年代までの
約110年間という長い間、山梨の宝飾産業を
支えた水晶を産出した鉱山です。
透明度の高い「無色水晶」「白色水晶」を
数多く産出したことで有名です。
 
 
「乙女鉱山」という名前は、
最盛期の明治時代、
若い男性は坑内で鉱石を掘り、
年老いた女性は鉱石の選別をし、
若い乙女は、男の鉱夫に混じって
鉱石の運搬を務めたことに由来すると
言われています。
 
 

石に命を吹き込む職人ワザ!
(「河野水晶美術」河野道一さん)

現在、国内で本格的に手作りの「水晶彫刻」を
手掛けているのは甲府のみです。
 
「水晶」発見当時は、原石のまま置物など
として珍重されていましたが、
江戸時代中期になると、神社の神官達が、
京都の「玉造」に原石を持参して、
加工させるようになっていました。
「甲州水晶彫刻」は、江戸時代中期より技術を磨き続け、繊細な美しさは世界的な評価を
受けてきました。
 
現代の名工、一級宝石研磨士、伝統工芸士など
数々の経歴・受賞歴を持つ、甲州水晶彫刻界の
重鎮・河野道一(こうの みちひと)さんは。
デザイン画などは使わず、
石の声を聞いて切り出し、自由自在に
形を掘り出していきます。
 
これまでに河野さんは、水晶彫刻業界に
数々の新技術をもたらしてきました。
当たり前の手法として定着している
「水晶の接着」も河野さんが開発した技術。
「接着」により、大きなサイズの水晶彫刻が
可能になりました。
他にも、金箔で接いだり、
意図的にクラッカー(傷)を入れるなど、
河野さんが編み出した新技術はいくつも
あります。
 
河野さんが手掛けるのは、
「水晶」だけではありません。
工房には、翡翠や瑪瑙、黒曜石など、
様々な天然石があります。
 
河野さんはまず、石の形や模様を見て、
何をつくるのかを決めます(「石取り」)。
経験とインスピレーションが
必要なこの作業は、最も重要で最も難しいと
言われています。
「めのう」という石を切ってみると
不思議な模様が入っている。
このような石は宝石や仏像を作るのに
適してはいません。
 
続いて、原石を切断し、
どのような形にするかの元絵を書き込む
「絵付け」を行います。
そして、その絵からはみ出ている部分を
カット(「切込み」)し、絵に合わせて
形を作っていきます(「カキ込み」)。
 
それから研磨剤と電動の鉄ゴマで磨いたら、
最後に光沢を出す磨いて完成です。
 
河野さんは敢えて石の模様を生かして
茶碗「流氷」を彫り出しました。
 
 

斬新なデザインに挑む

詫間康二さん
数百年の歴史を誇る水晶研磨の技術は
今、若い職人へ受け継がれています。
 
詫間康二(たくまこうじ)さんは、
これまでにない斬新なジュエリーを
制作しています。
 
発想の源は子供の時から好きだった恐竜。
「爬虫類は全然進化していない。
 何億年も前に、今の形と同じような
 究極の美のまま。
 石も美しいし、形も美しいと思ったので
 彫刻と組み合わせた」とおっしゃいます。
 
師匠は、彫刻研磨の職人の父、
詫間悦二さんです。
康二さんは、石を削り形を作る技を
見よう見まねで習得し、
数年前から作品を作り始めました。
 
山梨県立宝石美術専門学校
山梨県の地場産業である宝石装飾の
人材育成のために作られた学校であり、
日本国内唯一、公立の装身具を取扱う
専門学校です。
 
制作のテーマは、日常用いる様々なものを
ジュエリーにすることで、
ドイツからやってきた生徒は
タバコケースを作っていました。
お洒落なマスクを作っている生徒もいました。
 
卒業生達も枠にとらわれず、
アイデア溢れた作品を多く残してきました。
なお、卒業生はその後数年の産業経験の後、
ジュエリーマスター認定制度の認定を経て
装飾品職人になります。
 

www.pref.yamanashi.jp

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