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美の壺「しあわせの小宇宙 台所」<File 487>

<番組紹介>
誰にとっても身近な「台所」。
こだわり空間を徹底探検!
 ▽料理家・枝元なほみさんのプロの台所とは?
  台所の癒し効果教えます
 ▽世界の台所を建築家が再現したミニチュア模型に
  「なるほど」満載!
 ▽炎でじっくりレンガ釜の料理
 ▽400年続く京都の老舗料亭の「おくどさん」
 ▽美術家・森村泰昌さんの遊び心あふれる台所
 ▽日本と海外のアンティーク家具をカスタマイズする
  ハイブリッドな台所
 ▽釜神降臨?!
<初回放送日:令和元(2019)年10月25日 >
 
日々、欠かせない食事の支度。
生きるための空間、それが「台所」です。
人によって、様々な理想の台所があります。
料理家の台所は、質実剛健に使いやすく。
アーティストの台所は絵画のように芸術的に。
およそ400年続く京都の料亭で、
大切に受け継がれてきた「竃」(かまど)。
人と台所が織り成す物語。
その奥深い魅力を味わいます。
 
 

美の壺1.にじむ、暮らしの気配

 

枝元なほみさんの台所


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美味しい料理と気さくな人柄が人気で、
テレビや雑誌などで活躍する枝元なほみさんは、
職業柄、一日のほとんどをこの台所で過ごします。
 

 
 
枝元さんは、すごいぐちゃぐちゃになるタイプなので、
強い台所にこだわっているとおっしゃいます。
 
台所の強さとは?
そこには、料理のプロならではのこだわりがありました。
 
調理台の天板に選んだ素材は御影石。
頑丈なので、やかんや鍋を直接置いてもびくともしません。

 
床材には、スレートを使用。
汚れても掃除しやすく、
冬も足元を冷やさない素材を選びました。

 
つい散らかりがちな調理器具も
たっぷり収納出来る工夫がなされています。
 
「本当に、しょっちゅうこぼすし、汚すし。
 だけどそういうもんだと思うんです。
 毎日って、わあ、ぐちゃぐちゃだって
 思いながらやっていくんだけど、
 それを受け止めてくれる台所が好き。
 で、ここが一番好きな場所です。」
 
ありのままの「暮らし」が息づく台所。
そこに生まれる「音」にも
耳を傾けて欲しいと枝元さんは言います。
 
「料理をしている時の勢いのある音とか、
 静かに丁寧に準備を重ねていくような音とか、
 そういう思いみたいなものが消えていく音に、
 すごく宿っていくような感じがして。
 何かいいなと思ったんですよね。
 人が生きて暮らして食べていく気配がするっていうのが、
 そこが美しいなって思えるところかなと思う。」
 
 

建築家・宮崎玲子さんの台所

 
建築家・宮崎玲子さんは、30年間に渡り、
世界50ヵ国余の台所、食空間を実際に訪ね、
調査を行ってきました。
 
現地で感じた台所の面白さを表現したいと、
様々な国の台所を模型で再現しました。
 
ドイツの寒冷な地域の住居は、
調理の熱で、隣の部屋まで暖めるための工夫です。
 
ネパールのカトマンズ地方の伝統的な住まいです。
台所はどこかというと、台所には守り神がいるため、
 
イヌイットの住まいでは、調理場は屋外に広がっています。
だから結局、食事を作るところがなかったら、
 
夢中になって作るうちに、22体もの模型を制作。
暮らしの数だけ台所があります。
 

 
 
 

美の壺2.炎を受け継ぐ

 

農家民泊「kate no ie」

 
大分県杵築市山香町には、
豊かな自然の中に佇む一軒の古民家があります。
築80年の古民家の母屋と納屋を改装した
 
ホストは松本未來さんと奥さんの裕美さん。
民宿の開業をきっかけに、
「台所」も自分達の手でリノベーションしました。
特にこだわったのは、レンガで作った「竈」(かまど)です。
 
「やっぱり生活の中に火だったり、
 そういうものは欲しいなとは思ってて。」
 
まずは、火がつきやすい杉などの薪で焚き付けます。
炎が大きくなってきたところで、
クヌギなど、火もちのよい薪をくべていきます。
およそ1時間で「熾火」(おきび)と呼ばれる、
火力が安定し、調理に適した状態になりました。
 
結婚して初めて、竈に触れたという裕美さん。
未來さんのお母さんが作る「かまど料理」に
すっかり魅了されたそうです。
 
レンガ窯は発生する遠赤外線によって、
素材の芯まで熱を伝えることが出来るため、旨味が出ます。
じっくり時間をかけて、料理が仕上がっていきます。
 
「何か、ピッ!で終わらない生活というのは、
 私にとっては、とても幸せな時間だと思ってます。」
 
近所に住むお母さんがお昼ごはんにやって来ました。
メニューは自家製野菜たっぷりのピザと
お母さん直伝のもち麦のスープです。
竈を通じて受け継がれる味、そして暮らしがありました。
 

 
  • 住所:〒879-1307
       大分県杵築市山香町大字野原646
  • 電話:0977-70-9103
 
 

京都・鮎茶屋「平野屋」のおくどさん


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創業から400年続く老舗の料亭があります。
京都嵯峨野の鳥居本(とりいもと)鮎茶屋「平野屋」です。

 
 
「平野屋」の連なった5つのおくどさんは、
炊飯、煮炊きなど、それぞれに役割が決まっています。
煙は、茅葺屋根の虫を払う効果もあるため、
おくどさんは家の手入れにも一役買っています。
 
お昼時になり、店内が賑わい始めました。
客足が落ち着き一段落したところで、
おくどさんの煤払いを行います。
丁寧に感謝を込めて、次の日に備えます。
 

 
お店を継ぐのは、15代目の井上匡人さんです。
「その後は、自分の息子達がやってくれるかなと思うんですけど、
 ここの家になくてはならないものですし、
 同じように続けてはいきたいですけどね。」
 
  • 住所:〒616-8437
       京都府京都市右京区
       嵯峨鳥居本仙翁町16
  • 電話:075-861-0359
 
 
 

美の壺3.とことん私らしく

 

森村泰昌さんの台所


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大阪・鶴橋にある長屋通りの一軒を訪ねると、
そこには何とも可愛らしい台所がありました。
 
映画女優や世界的名画に描かれた人物らに扮装した
自身を撮影した写真作品で知られる現代美術家・
森村泰昌(やすまさ)さんの台所です。
 

 
森村さんは、台所にも自分の分身のように愛情を注いでいます。
自他共に認める料理好きの森村さんは、
友人を招いては、自慢の手料理でもてなすのだそう。
 
この日訪れたのは、大阪大学総長の西尾章治郎さんご夫妻です。
森村さんの自宅を訪れるのは初めて。
最初にご案内したのは、台所です。
おもてなしの一品は、この日のために考えたという、その名も「」。
全て白いネタで統一しています。
台所から始まる、唯一無二のおもてなしです。
 
 

ナンシー・シングルトン・八須さんの台所


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米カリフォルニア州出身の
ナンシー・シングルトン・八須さんは、
名門スタンフォード大学を卒業されてから、
日本食に惚れ込み、昭和63(1988)年の夏に来日。
縁あって、埼玉で英語教師の職に就きます。
来日から約1年半後、
農業を営んでいた八須理明(ただあき)さんと結婚し、
埼玉県の北西部にある、のどかな田園風景が広がる
神川町での生活が始まりました。
 
ナンシーさんの自宅は、
昔ながらの佇まいが魅力的な築90年の日本家屋です。
玄関の暖簾を潜ると、とても素敵な台所が広がっています。
 

 
アンティーク家具に囲まれた趣のある台所。
調理台は、マラカイトというアメリカ産の天然石の天板と
水屋箪笥と呼ばれる台所用の箪笥が組み合わされたものです。
巨大なオーブンはアメリカ製。
日本と海外の物とが美しく調和した、ハイブリッドな空間です。
 
ナンシーさんは人一倍、台所にこだわりがありました。
建物の魅力は残しつつ、たくさんの人が集まる台所に出来ないか。
以前台所は、人目に触れない、奥まった位置にありました。
ナンシーさんのアイデアで台所の場所を変更。
更に、敢えて玄関と繋げることで、広く、人が行き交いやすくしました。
すると台所は明るく、オープンなスペースに。
 
この日は、息子のアンドリューさんと
ナンシーさんが営む幼稚園の子供達が集まりました。
時々、台所に招いて、一緒に料理を楽しむのです。
大好きな台所では伝えたいことがたくさんあります。
今日は、味噌とすりごまが隠し味のクリームパスタを作りました。
子供達に世界への扉を開く、ナンシーさんの台所です。
 
現在、ナンシーさんは農家の妻、
そして3人の子供達の母親という顔を持ちながら、
日本で暮らしを世界に向けて、日本食の魅力を伝えています。
 
平成26(2014)年には、料理版アカデミー賞とも言える
「グルマン世界料理本大賞」のTranslation部門で
『Japon, La Cuisine a la Ferme』がグランプリを受賞しました。

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